この映画はいわゆる王道のラブストーリーではなく、描かれるのはありがちな恋の三角関係ではない。フジはもちろん、弥生も春も不器用で、誰かを愛する気持ちをまっすぐに信じることができない。はっきりもすっきりもしないまま、一筋縄ではいかない複雑な関係が描かれていく。
フジは、元カノの春が自分と別れた本当の気持ちも、今カノの弥生が出ていった理由もわからない。「精神科医って自分のことは治せないんですね」と同僚の医師にこぼし苦悩する。見ていてかわいそうになってしまうようなフジの心境を、佐藤はオーバーな表現はせず、抑えたトーンで繊細に演じている。それだけに、クライマックスでフジが思い切った行動に出る場面は、思わず「頑張れ!」と応援したくなる。
映画の後半では、春がフジに写真を送ってきた理由、弥生が失踪して向かった場所など、意外な事実が明らかに。さすがはストーリーテラーの川村元気という展開になっていく。川村は佐藤とはもちろん、新海誠監督のアニメ映画をプロデュースして「君の名は。」では長澤、「天気の子」では森とも組んだが、そういったなじみのあるキャストだけに、本作も川村ワールド全開だ。
監督は、米津玄師やあいみょんのMVを撮り評価されてきた山田智和。これが長編映画初監督となり、ウユニ塩湖でロケをしたオープニングの映像など、透明感と空気感のある映像で、自分の気持ちさえ理解できない迷える主人公たちを映し出している。
文=小田慶子
放送情報【スカパー!】
四月になれば彼女は
放送日時:2024年11月23日(土)20:00~
チャンネル:WOWOWシネマ
放送日時:2024年11月24日(日)15:30~
チャンネル:WOWOWプライム
※放送スケジュールは変更になる場合がございます
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