その2人の関係性だが、性的なシーンもあり倒錯した欲望を互いに補い合っているようにみえる。しかし、福士と松本の芝居はそういった身体的欲求を埋めるためにいるのではないと雄弁に語る。では何のためにいるのかと問われると、これは観客によるとしかいえないだろう。今回は一視点として湖のシーンをあげてみたい。
■物語の屋台骨、福士蒼汰と松本まりか2人の芝居
濱中と豊田の湖のシーンは2人が一緒にいるラストシーンとなる。湖の真ん中に漕ぎだしたボートの上で濱中は豊田に手錠をし、豊田に湖に飛び込めと命令する。
命令された時の松本の表情は恍惚ではない。かといって不安そうでもない。不思議な表情をしている。まるで自身を閉じ込める硬い殻からの脱却、死別を出来ることにひどく安堵しているようにみえた。それは松本自身がコメントで述べた「自由な瞬間」であったかもしれない。
一方、福士も不思議な表情をしている。警察官にもかかわらず、人を殺してしまうかもしれないといった怯えや豊田の忠誠心を試してやろうという気持ちにはみえない。ただ淡々と命令している。濱中に家庭や上司から受ける鬱屈した感情があることは頷けるが、そこから自暴自棄になったというわけでもない。福士の芝居はただ湖に存在している、我思う故に我ありといったような空気と一体になった芝居をしていた。それは今までの福士の芝居とは一線を画す芝居だろう。
ここまで書いたのはあくまで参考だ。この作品は観てみないとわからない、他人に説明するのが非常に難儀な作品。しかし、それこそ映画体験の1つである種、醍醐味的な作品ともいえる。そんな不思議な感覚をあたえてくれる福士蒼汰、松本まりかの演技を是非、ご覧あれ。
文=田中諒
放送情報【スカパー!】
湖の女たち
放送日時:11月30日(土)22:10~ ほか
放送チャンネル:WOWOWシネマ
※放送スケジュールは変更になる場合があります
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