見どころの1つとも言えるのが、飛騨・古川町から製糸工場のある岡谷まで約40里(約157キロ)の踏破だ。みねたちは美女峠、寺坂峠、野麦峠という3つの峠を越えなければならないが、雪深い時期の山越えは困難を極めるもの。その厳しさは、実際に吹雪の中、撮影に挑んだキャストたちの姿からもひしひしと伝わってくる。
さらにここではロープで繋がれた3人の新工が崖から滑り落ちてしまうシーンがあるが、その一部では実際に大竹が雪の中を転がっていることも、撮影の過酷さを物語っている。
また、匂いのも苦しめられたという。生糸を取り出す際に繭を煮るが、その時に独特の匂いが発生する。作品内でも新工が匂いに気を失ってしまうシーンがあるように、製糸工場内は不快な匂いが外に漏れないように締め切られて充満している。そんな過酷な環境であってもしっかりと演じきる大竹の女優魂はさすがであり、女優として大成する下地が見え隠れする。
1979年の邦画配給収入で2位を記録したヒット作「あゝ野麦峠」。45年の月日が経った今も色褪せない名作へと昇華させている理由の一つには、過酷な環境で働く糸取り工女役に体当たりの演技で挑んだ若き日の大竹の活躍があるに違いない。
文=安藤康之
放送情報【スカパー!】
あゝ野麦峠<4Kデジタルリマスター版>
放送日時:1月12日(日)21:00~ ほか
放送チャンネル:日本映画専門チャンネル
※放送スケジュールは変更になる場合があります
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