
――本作では10年の物語が描かれます。そこで、おふたりの10年前のことについてお聞かせください。当時、10代で俳優の仕事を始めていた橋本さんと中川さん。どんな状況で、どんな思いで俳優をされていたのでしょうか?
橋本「ちゃらんぽらんで、ぐっちゃぐちゃで、カオスでしたね。中学2年生ぐらいからお仕事を始めたのですが、割とすぐにお仕事が決まって、自分の存在も早いうちから多くの人に知られることになったので、スキルもないし、心の準備もできていないまま世に出てしまい...。それはそれはデンジャラスな日々でした(笑)。数年は、下積みがない状態でも、どこか自分の存在だけで面白がってもらえていたんですけど、『このままじゃ絶対続かないだろうな』と思っていましたね。
それこそ、高校生とか10代後半だった10年前は、ちょうどその壁にぶつかりまくってる時期です。できない自分もいたし、もうやりたくないと思う自分もいたし、でも認められたいと思う自分もいたし...まさにカナコみたいに、どう見られたいか、どうありたいか、何をしたいのか、すべて矛盾していて、全部がぐちゃぐちゃに絡み合って、何の筋も通っていませんでした。ひとりの人間としても、俳優としても、本当に未熟な時期でしたね」
中川「当時の僕は、めちゃくちゃ生意気で、本当に調子に乗っていました。いま、自分みたいな16歳がいたら絶対に許さない!」
橋本「(笑)」
中川「当時、学園ものをよくやっていたんですけど、生徒役のなかでも最年少で、一番下にいるのが居心地良く、楽しんでやっていました。生意気ながらお兄さん、お姉さんたちの世代と一緒にやっていたのですが、よくもみんなあんなに可愛がってくれたなと思います(笑)。ただ、中学生ぐらいのときに『大人になってもこの仕事をするだろうな』と思い始めていたんで、10年前の高校生のときには、自分のなかで『現場に立つこと』への意識は強く持っていました」
――お話ししていただいた時期から10年が経ちました。自身の変化、成長を感じる部分はございますか?
橋本「まるごと変わりました。昔は自分の愚かさや醜さを悪だと思って、『なんで自分は...』と卑下して否定していたんですけど、今は逆に自分の愚かさやズルさにオリジナリティを見出すようになりましたね。世の中には、悲しい、辛い、楽しい、嬉しい作品はいっぱいあるけど、ずるい作品ってあまりないなと思ったんです。『もしかしたら、愚かさやズルさって、すごくプライベートでクリエイティブなのかもしれない』と思えてからは、自分自身の愚かさやズルさを面白がれるようになれましたね」
中川「10代後半までは、周りと比べることが多かったし、どう見られるか不安だったし、自信もなかったんですよ。でも、20代になったあるとき、自分の通ってきた道筋の点と点が一本のキャリアとしてつながって、『中川大志』というひとりの俳優としてのカラーになり、評価してもらえた瞬間があって...。『結局はどうやったって人と同じことにはならないんだな』と思えたとき、少し解放された気がしました。もちろん、一つひとつ大切にはしているんですけど、すべてが通過点で、うまくいかなくても、最終的には道になって、僕がやってきた歴史になるんだな、と思うと、より自由になれた気はしましたね」
文・写真=浜瀬将樹
映画情報
映画「早乙女カナコの場合は」
公開日:3月14日(金)
原作:柚木麻子
監督:矢崎仁司
出演:橋本愛、中川大志、山田杏奈、臼田あさ美、中村蒼ほか
(C)2015 柚木麻子/祥伝社 (C)2025「早乙女カナコの場合は」製作委員会
配給:日活/KDDI
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