主演・山口馬木也の豊富な経験から生み出される演技に脱帽!「侍タイムスリッパー」

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この作品はともかく脚本がまず面白い。展開を予測できないのだ。興行収入と口コミから「カメ止め」の再来と言われた本作だが脚本の波乱万丈さも似ている。また、東映京都撮影所が全面協力したというだけあり自主製作映画とは思えないクオリティの高さで時代劇の街並み等は引き込まれる世界観だ。

俳優陣の魅力も存分に出ている。主演を務めた山口馬木也はその筆頭、本作で数々の賞を受賞した。端正な顔立ちながら斬られ役としてかなり不格好な姿をさらし幕末の侍としての言動という設定が観客を笑いに導く。山口はタイムスリップしてきた侍が本気で時代劇の撮影所に紛れこんだことに困惑している物語序盤と、斬られ役として力をつけていく中盤で芝居をしっかりと変えている。それは単純に芝居が「うまい」ということで、劇の中で劇をするというメタ的な視点にしっかりリアリズムを与えている。

そして何より、最後の殺陣のシーンは外せない。ストーリーが魅力の本作のネタバレはあまりしたくないので情報を少し削ってお伝えさせていただくが、とにかく殺陣が素晴らしい。息を吞むような、緊迫した長い間から繰り出される斬撃の数々は、劇中でコメディとして描かれていた斬られ役としての殺陣から一変。むしろ序盤のそれらがあるから活きるともいえよう。とにかく見応えのあるシーンだ。また、山口の動きも見事でキレがある。山口がこれまで多くの時代劇に出演してきたことによる殺陣に対する場慣れといったものが、転じてタイムスリップしてきた新左衛門の侍としての場慣れに通じているるように思う。この場面が山口の代表シーンになることは間違いない。

百聞は一見に如かず。ぜひ、観てみてほしい。きっと誰も後悔させない作品だ。

文=田中諒

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放送情報【スカパー!】

侍タイムスリッパー
放送日時:2025年6月14日(土)19:00~ほか
放送チャンネル:時代劇専門チャンネル
※放送スケジュールは変更になる場合があります
※本編後にチャンネルオリジナルの特別番組も放送

詳しくは
こちら

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