あらゆる人生が交差する群像劇として見応えのある本作。「MOZU」シリーズや「サヨナライツカ」(2009年)、「名探偵・明智小五郎」(2019年)、「さよならマエストロ～父と私のアパッシオナート～」(2024年)で夫婦役を演じるなど、これまでにも西島と共演歴の多い石田ゆり子は、事件に遭遇する主婦のアイコ役を担当。

煌びやかなイブに、家族のプレゼントを選んでいたはずが、あれよあれよと犯人の指示に従うことなり、その中では同じく事件に巻き込まれた来栖を励まし、包み込む母性を見せる場面も。温かさがありつつ、どこか儚げでもある、石田の個性と俳優力が本作でも光り、アイコの生き方を見届けたくなる。

そして事件の容疑者を演じた佐藤浩市は圧巻の存在感を放ち、中村倫也、広瀬アリスら日本の映画界を支えるトップランナーが勢揃い。それぞれの痛みが表出していく過程、そして渋谷スクランブル交差点の巨大オープンセットを使用した圧巻の爆破シーンは、生々しさとその場にいるかのような臨場感があり、誰もが他人事ではいられなくなるような緊迫感を与えてくれる。

文＝成田おり枝