松たか子の映画初主演作――岩井俊二監督「四月物語」で輝く若き日の瑞々しい演技
俳優
(C)1998 ROCKWELL EYES INC.
友人と一緒に釣りのサークルに入ったり、団地の隣人を食事に誘ったり、新しい生活の中でのさまざまな出会いに、ちょっとクスッとしてしまうような場面を交えながら、物語はゆっくりと展開していく。そんな中で、卯月の表情の変化が気になるシーンも増えていく。
釣りサークルの先輩が「プレゼントする」と言って、卯月のカーディガンのボタン穴にルアーを引っ掛けた時には硬い表情となり、東京に来てから通うようになった書店で、店員が在庫を探して近づいてきた時は、驚いたように身を引く。
そういった表情の変化の理由はやがて明らかになるのだが、その過程も見どころだ。故郷の草原で本を手にしている回想シーンなどは、柔らかな生命力が感じられると同時に温かな色香が漂っているし、その後、現在に戻って、雨の中壊れた傘を手にしながら見せるしっとりとした表情も、想いがこもっていてとても魅力的だ。
本作は、楡野卯月という学生の人生の一幕を切り取った物語だが、俳優・松たか子の若き日の魅力がしっかりとスクリーンに映し出されている作品でもある。本作でぜひ、瑞々しくて味わいのある松の演技をじっくりと堪能してほしい。
文=堀慎二郎









