寺島進、「再捜査刑事・片岡悠介」で見せる強面の奥の優しさ "死を呼ぶお忍び旅行"に挑む人情派刑事

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第10作の面白さは、そんな片岡の人のよさが、かなりいびつな事件に巻き込まれていくところにある。発端は、母・美知恵が健康診断で世話になった看護師・川越明日香からの相談。片岡は、かわいらしい看護師だと聞いて下心を抱きながら病院へ向かうが、そこで明日香から、病院長・北林麻弥子の濡れ衣を晴らしてほしいと頼まれる。片岡の少しだらしない一面から始まった依頼が、10年前の死と現在の殺人事件へつながっていく導入に、このシリーズらしい軽さと不穏さが同居している。

10年前、麻弥子の夫で前病院長の昭一郎は、河口湖近くの崖から転落して亡くなった。当時は事故死として処理されたが、ここへきて病院内では「麻弥子が夫を殺したのではないか」という噂が広がり始める。昭一郎の母で理事長の美鈴のもとには、差出人不明の手紙が届いていた。そこには、息子は妻に殺されたという告発が記され、血痕らしきものが付着した"岩"を撮影した写真まで添えられている。さらに、週刊誌記者の殺害事件が起き、過去の事故死は一気に現在の事件として立ち上がっていく。

ここで寺島が見せるのは、地道に人へ向き合う刑事の姿だ。片岡は相手の話を聞き、小さな違和感を拾い、納得できるまで足を動かす。声を荒らげる場面にも、相手の心の奥へ踏み込もうとする切実さがある。疑うべきところは鋭く見つめながら、その向こう側にある痛みまで見ようとする。事件の真相を追う刑事としての執念と、"再捜査の鬼"と呼ばれる一面を持ちながらも誰かを放っておけない人間臭さが、寺島の表情に同時に宿る。

特に本作では、片岡の"軽さ"が事件の重さを受け止めるための重要な要素になっている。看護師に会いに行く前の下心、母に振り回される情けなさ、捜査の合間に見せる調子のよさ。そうした隙があるからこそ、彼がふと真顔になった瞬間の迫力が際立つのだ。

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