吉岡秀隆が見せる"穏やかさの奥の揺らぎ"...16年ぶりに演じた「Dr.コトー」でにじませる、医師の迷いと覚悟

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映画「Dr.コトー診療所」
映画「Dr.コトー診療所」

©山田貴敏 ©2022 映画 「Dr.コトー診療所」製作委員会

志木那島では過疎高齢化が進み、近隣諸島との医療統合の話が持ち上がる。コトーには島を出て拠点病院で働く提案が持ちかけられるものの、長年暮らしてきた島の未来を思い、すぐに答えを出せないでいた。そんな中、台風が島を襲い、診療所には次々と急患が運び込まれていく。

16年という年月は、演じる吉岡自身にも流れている。再びコトーを演じることについて、吉岡は当時の映画製作報告会見で「もう一度戻れるのだろうか?」と自問自答する日々があったと振り返っている。そして、同じキャストやスタッフと再び現場に立つ中で「コトー先生に戻してもらった感じ」と語っている。

そんな16年ぶりのコトー役で改めて感じさせられるのが、吉岡の繊細な表現だ。

コトーは、島民から厚い信頼を寄せられる医師。穏やかな口調や柔らかな佇まいは、長年にわたって島で暮らし、患者と向き合ってきた人物像そのものでもある。一方で、島の医療を取り巻く環境には変化が訪れている。吉岡は、これまでのコトーらしさを保ちながら、年月を重ねた人物の変化も丁寧に表現している。

映画「Dr.コトー診療所」
映画「Dr.コトー診療所」

©山田貴敏 ©2022 映画 「Dr.コトー診療所」製作委員会

そんなコトーの医療への向き合い方を映し出すのが、髙橋海人(King & Prince)が演じる新米医師の織田判斗と、かつての患者・原剛洋(富岡涼)だ。

判斗は、へき地医療を学ぶため志木那島にやって来た大病院の御曹司。現実主義で合理性を重視する人物で、島民との信頼関係を大切にするコトーとは異なる考え方を持つ。単純な対立ではなく、2人の医療への向き合い方の違いが、島の医療体制が抱える現実を浮かび上がらせる。

一方、剛洋は、幼いころにコトーに命を救われ、医師を志した少年。大人に成長した彼は医学部を中退し、夢を果たせないまま島へ戻ってくる。剛洋を演じる富岡は、2006年のドラマ出演後に俳優業を離れていたが本作のためだけに復帰し、16年ぶりに同じ役を演じて公開当時話題になった。

また、劇場版には、柴咲コウ、時任三郎、大塚寧々、泉谷しげる、筧利夫、小林薫らドラマ版のキャストが再集結。16年という時間を経て再び同じ作品に集ったキャストたちの存在そのものが、劇中の年月をリアルに感じさせる。

映画「Dr.コトー診療所」
映画「Dr.コトー診療所」

©山田貴敏 ©2022 映画 「Dr.コトー診療所」製作委員会

映画「Dr.コトー診療所」が描くのは、懐かしい島の風景や変わらない人々だけではない。変化する医療体制、現実主義的な医師の判斗、医師になる夢を断念した剛洋ら、それぞれの現在が重なることで、かつての物語の続きとしてだけではない、"今"の志木那島が見えてくる。

その中で吉岡秀隆が演じるコトーは、以前と変わらない穏やかな佇まいを保ちながら、年月を重ねた人物として新たな表情を見せる。島民に寄り添い、患者と向き合う姿には、これまでコトーが積み重ねてきた時間がにじむ。吉岡は大きな身振りに頼ることなく、表情や声のトーンなど細やかな変化によって、コトーの現在を映し出している。

コトーという役に刻まれた年月をたどることで見えてくるのは、同じ役を演じ続けることの強さだけではない。人物の過去や変化を受け止め、その時々の感情を新たに積み重ねていく吉岡秀隆の演技だ。16年という時間を経て再びこの役と向き合った吉岡が演じる"今"のコトー。その穏やかな佇まいと、変化する志木那島での姿に注目したい。

文=HOMINIS編集部

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