吉田潮が「生きるとか死ぬとか父親とか」を語る!「吉田羊松岡茉優で紡ぐ感情のリレーは見所の一つ」

「生きるとか死ぬとか父親とか」より
「生きるとか死ぬとか父親とか」より

ラジオパーソナリティーで悩み相談の達人でもあるジェーン・スーのエッセーが原作。リスナーの心のザラつきやモヤモヤを掬いあげ、見事な咀嚼法を教えてくれる彼女(劇中では蒲原トキコ)を演じたのは吉田羊だ。

ラジオのお悩み相談シーンは 視聴者に自分事だと思わせる吸引力があった。独身の覚悟や仕事の評価、老いの不安、彼の浮気に夫のかつら、セックスレスに不倫......。リスナーの悩みとリンクするように、女友達(中村優子・石橋けい)やアナウンサー(田中みな実)の心のほつれにも触れていくことになるトキコ。前半は「人の数だけドラマがある」といった趣である。

とはいえ、この作品の主軸はトキコと父・哲也(國村隼)の対峙。対立や憎悪といった稚拙な構図ではない。実際に画面に映るのは、銀座散策や動物園デートをする仲良しな父と娘だ。ちゃめっ気たっぷりに何かと頼ってくる父にかいがいしく世話を焼くトキコだが、心の中では「まだ父を許していない」とつぶやく。

吉田羊と國村隼がW主演を務めた「生きるとか死ぬとか父親とか」
吉田羊と國村隼がW主演を務めた「生きるとか死ぬとか父親とか」

理由は後半で描かれる。舞台は母親(富田靖子)が生きていた頃にさかのぼる(20代のトキコは松岡茉優が演じた)。父は肝炎、母はがんを患って入院。掛け持ちで看病に通うトキコは父の不義理を知ってしまい、怒りと悔しさと無力感に苦しむ。母亡き後は感情を封印、父の不義理も黙認してきたが、生前の母の苦悩を知り、ある決断をする。

羊&茉優で紡ぐ感情のリレーは見所の一つ。もう1点強烈だったのは劇中に登場した花。母が好きだったのは清廉な白いカラー。父の恋人(内田慈)が飾るのはいつも深紅の皇帝ダリア。残酷な対比だが、女の気質と男の無神経を浮き彫りにする的確な暗喩だ。

文=吉田潮

よしだ・うしお●'72年生まれ。ドラマ好きのコラムニスト兼イラストレーター。週刊誌や新聞でテレビ・ドラマ評を執筆。時々テレビにコメンテーターとして出演。著書「くさらないイケメン図鑑」など著書多数。ネコ2匹と同居中。

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放送情報

生きるとか死ぬとか父親とか
放送日時:2021年11月3日(水)0:00~
チャンネル:女性チャンネル♪LaLa TV
※放送スケジュールは変更になる場合があります

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