薬師丸ひろ子が「アイドル」としての魅力をみせた映画「ねらわれた学園」

1978年、中学生の時に高倉健主演の映画『野生の証明』で鮮烈なデビューを果たした女優・薬師丸ひろ子は、当時、隆盛を誇った「角川映画」が生んだ"映画スター"だった。その後、相米慎二監督が手がけた初主演作『翔んだカップル』で子役のイメージから脱皮し、等身大の若手女優としての一歩を踏み出した薬師丸が、ちょうどその後に出演し、アイドル的人気を確固たるものとした作品が1981年公開の『ねらわれた学園』。そんな注目作が衛星劇場で放送予定となっている。

プロデューサーの角川春樹は本作の企画を立てる際、量産体制に入っていた角川映画を支えるために、当時、角川の専属女優だった薬師丸ひろ子を「アイドルにできないか」と考えていたという。そしてそんな彼女の魅力を引き出すために選ばれた題材が眉村卓原作のSFジュブナイル小説「ねらわれた学園」だった。
 
そして、そのリクエストに応えるべく白羽の矢が立てられたのが、映像の魔術師と呼ばれた大林宣彦監督だった。角川春樹プロデューサーの狙いとしては、大林監督がこの題材を撮る事によって、第二の『HOUSE』(人を喰らう屋敷を訪れた少女たちを大林監督の劇場映画初監督作となるホラーコメディ)にしたいという思いがあったという。CMディレクターとして多くのクライアントの要求に応えてきた実績のある大林監督はそのオファーを快諾。「全編に"ひろ子スタンプ"が押されている映画にする」ということに心を砕き、ファンの目線に立った映画づくりを心がけたという。
 
本作の物語の舞台は進学校の第一学園。そこに通っていた優等生の由香(薬師丸ひろ子)は、ある時、自分に超能力が備わっていることに気づき戸惑う。そんな時、学園にみちる(長谷川真砂美)という少女が転校してくる。その不思議なカリスマ性で生徒会長になったみちるは、生徒や教師を懐柔し、学園を支配しようと目論む。一方、みちるの背後に怪しい学習塾・栄光塾の存在を感じとった由香たちは、その陰謀に立ち向かう。
 
女優・薬師丸ひろ子を育てた角川春樹プロデューサーは、その魅力を「目力の強さ」と語っていたが、その言葉通り、凛としたたたずまいと、1本芯の通った強さを持つ彼女は、今回の由香という役柄にピッタリ。等身大で親しみやすいキャラクターでありながらも、ミステリアスな雰囲気も秘めている超能力者、というヒロイン像もどこか彼女と重ね合わせられることができるようにも感じられる。

そんなアイドル映画でありながらも、合成や逆再生、アニメーションなど、映像の魔術師と呼ばれる大林監督の映像マジックがふんだんに織り込まれた、作家性の強い作品としても語り草となっている。CGのなかった時代に、イマジネーションを駆使して創りあげたきらめくばかりの映像美は今観ても斬新だ。そしてタイトルバックに流れる主題歌は、ユーミンこと松任谷由実の「守ってあげたい」。楽曲単体でも大ヒットを記録し、80年代以降のユーミンの第二次ブレイクの礎となったことにも注目だ。

文=壬生智裕

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放送情報

ねらわれた学園
放送日時:2022年9月9日(金)18:00~
チャンネル:衛星劇場
※放送スケジュールは変更になる場合があります

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