薬師丸ひろ子の背伸びする姿がいじらしい !「メイン・テーマ」で演じた少女と大人の間

「メイン・テーマ」
「メイン・テーマ」

連続テレビ小説「エール」への出演も話題を呼び、昨年は歌手活動40周年を記念した精力的な動きを見せてファンを喜ばせた薬師丸ひろ子。『野性の証明』(1978年)でデビューして以降、唯一無二の輝きをまとい、いつの時代も見る者を魅了し続けている。そんな彼女の少女から大人の女性へと移り変わる表情を見事にとらえた森田芳光監督作『メイン・テーマ』(1984年)は、青春ロードムービーとして見逃せない1作だ。

『野性の証明』で高倉健を相手に堂々たる芝居を見せた薬師丸のデビューは、実に衝撃的なものだった。その後は相米慎二が監督デビューを果たした青春ラブコメディ『翔んだカップル』(1980年)、機関銃をぶっ放して「カ・イ・カ・ン」とつぶやく一言が流行語にもなった『セーラー服と機関銃』(1981年)、松田優作との濃厚なキスシーンも話題を呼んだ『探偵物語』(1983年)、アクションあり、特撮ありのSF時代劇の中で生き生きとした姫を演じた『里見八犬伝』(1983年)など、ヒット作に次々と出演した。

『セーラー服と機関銃』では主題歌で歌手デビューも果たし、その透明感あふれる歌声も観客の心を鷲掴みにするなど、日本映画界を代表するスターとして一気に駆け上がっていった薬師丸。彼女が特別なのは、どんなにおてんばな女の子を演じたとしても、いつも凛々しさと気品、健気さが漂うような魅力を持っていること。スクリーンに現れれば目が離せなくなるし、次に彼女がどんな顔を見せてくれるのか、幅広い世代から待ち望まれる存在となっていたのだ。

薬師丸ひろ子がヒロインをチャーミングに演じた「メイン・テーマ」
薬師丸ひろ子がヒロインをチャーミングに演じた「メイン・テーマ」

(C)KADOKAWA 1984

そんな人気絶頂期に主演した『メイン・テーマ』は、20歳になった薬師丸の等身大の姿を映し出した青春映画。薬師丸が演じたのは、幼稚園で教員をしていた小笠原しぶき。ひょんなことから退職せざるを得なくなり、訪れた房総の海岸で見習い中の若いマジシャン・健(野村宏伸)と出会い、彼の4WD車に一緒に乗って旅をすることになる。

しぶきは幼稚園で面倒を見た子どもの父親・渡(財津和夫)に憧れを抱いていた。しかし渡には雅世子(桃井かおり)というジャズ歌手の恋人がいた。そして健が雅世子に惹かれていき...と、4人の想いが絡み合う中、19歳から20歳になろうとしているしぶきは、少女と大人の狭間で揺れ動いていく。

「メイン・テーマ」
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(C)KADOKAWA 1984

年上の男性・渡に憧れながらも、しぶきにはそれが愛なのかはよく分からない。会えば言い合いになる同世代の健はなぜだか気になる存在で、2人が雅世子に特別な感情を抱いていることを知れば、怒りなのか、切なさなのか、モヤモヤとした想いが湧いてくる...。そんなしぶきの戸惑いを、薬師丸が見事に表現している。

渡が両手でしぶきの頬を包み込むシーンは秀逸で、ぎゅっと目をつぶった彼女の姿から、男性に触れられた緊張と不安が伝わり、こちらもドキッとさせられた。また、くわえタバコの似合う色っぽい雅世子と愛について語り合う場面は、一生懸命に背伸びをするしぶきがなんともいじらしく、鮮烈な印象を残す。

「メイン・テーマ」
「メイン・テーマ」

(C)KADOKAWA 1984

作詞・松本隆、作曲・南佳孝による主題歌「メイン・テーマ」と挿入歌「スロー・バラード」も薬師丸が担当。どちらも歌詞はもちろん、センチメンタルなメロディもしぶきの心をそのまま反映したかのような名曲で、薬師丸の澄んだ歌声と共に、しぶきの青春ストーリーがじんわりと心に染み渡ってくるよう。

またポニーテールやカチューシャ、チェックのシャツといったファッションをはじめ、映画全編から香る80年代の雰囲気も見ごたえたっぷり。"マジシャン・健"のテクニック披露や、クライマックスのお祭り騒ぎには、気鋭・森田監督によるユーモアあふれる演出が冴え渡るなど、今見返してみても味わい深い作品だ。

文=成田おり枝

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放送日時:2022年5月27日(金)21:00~
チャンネル:歌謡ポップスチャンネル
※放送スケジュールは変更になる場合があります

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