ネクスト・ウチムラ!「世界体操2017」でしのぎを削った次世代の選手たち

体操の世界大会である「世界体操」が今年も開催された。47回目となる今大会は、カナダ・モントリオールで7日間にわたって開催。今年は団体種目の開催はなく、個人総合と個人種目別の2つの競技が行われた。今大会にむけては、日本代表・内村航平の個人総合大会7連覇への挑戦もさることながら、この偉業に待ったをかける選手が現れるのかという点にも大いに注目が集まっていた。内村は大会中に負傷してしまったため、個人総合7連覇はならなかったが、本命不在の個人総合はその分混戦に。空位となった王座を巡って各国の有力選手がしのぎを削った。

母国への思いを胸に、内村に最も迫った男

大会前に打倒内村の最右翼と目されていたのが、ウクライナのオレグ・ベルニャエフ。若干23歳という年齢ながら、昨年のリオ五輪個人総合では内村と熾烈な金メダル争いを展開。結果としては銀メダルに終わったものの、金メダルの内村との差はわずか0.099。これは内村が制した過去8回の世界大会(世界体操6回、オリンピック2回)の中では、最も内村に迫った得点差であった。過去には国籍変更の打診もあったベルニャエフだが、両親やコーチと話し合いこれを断っている。その溢れんばかりの母国愛が、彼の好成績の一因となったのかもしれない。

大会前に台湾・台北で行われたユニバーシアード(「大学生の五輪」とも呼ばれ各国から若手有望選手が集う大会)に出場し、個人総合で金メダルを獲得したベルニャエフ。手ごたえをつかんで迎えた今大会ではらしくないミスもあったものの、随所に好演技を披露。特につり輪は、予選より難易度を挙げた構成で全体1位の得点を記録している。今後に向けて、まだまだ伸びしろを感じさせるベルニャエフの演技は必見の価値ありだ。

王国復活の旗手。中国の次代を担うオールラウンダー

数年前までは、体操王国という言葉は中国のことを言い表していた。種目別のスペシャリストを揃えた陣容は隙が無く、2008年の北京オリンピックでは金メダル8個中7個を獲得するなど栄華を極めていた。しかし徐々に成績は落ちていき、昨年のリオオリンピックでは遂に金メダルの獲得数は0に。屈辱を味わった中国にとって、今大会はその雪辱を晴らすための大会でもあった。

そんな中、体操王国復活を担う選手と目されたのが21歳の肖若騰(シャオ・ルオテン)。これまで種目別の選手育成に重点を置いてきた印象の強い中国であるが、その印象を大きく変えるような個人総合向きの選手を送り出してきた。これまでの世界大会では目立った実績は無いものの、今大会では全種目でミスの少ない安定した演技を披露し、頭一つ抜け出た総合力の高さを見せてた。今後も中国を力強く引っ張っていくことが予想されるので、今大会を機に名前を覚えておくことをおすすめしたい。

灯台もと暗し。王位継承を狙う日本の俊英

内村のライバルが海外の選手だけとは限らない。お膝元である日本にも、内村越えを実現する可能性のある選手がいる。その最有力候補が白井健三。先述の肖若騰と同じ21歳という年齢でありながら、既に世界体操で3個、五輪で1個の金メダルを獲得している逸材だ。代名詞である「ひねり」を武器に、これまでは個人種目別の床と跳馬のスペシャリストとして日本代表に貢献してきた。

そんな彼が今大会では日本代表として個人総合にも参戦。代表入りをかけた今年5月のNHK杯では内村と0.350点差で2位となり、見事にその座を射止めた。得意種目であるゆかと跳馬は個人総合でも健在で、白井の大きな強みになっている。スペシャリストからオールラウンダーへと転身を遂げた今大会、白井にとっては今後に向けてのターニングポイントとなる大会かもしれない。

以上に挙げた3選手の他にも、前回の世界体操で銀メダルを獲得したキューバのマンリケ・ラルデュエトや、肖若騰と共に中国の両翼を担う林超攀(リン・チャオパン)。さらにはソビエト連邦時代からの体操大国であるロシアのダビド・ベルヤフスキーなど今大会には好選手が目白押し。今後の体操界を間違いなく引っ張っていくであろう次世代の選手たちが、その先頭に立とうとしのぎを削った「世界体操2017」。内村不在の中、新たな世界王者に輝いたのは一体どの選手なのか、ぜひその目で確かめてみてほしい。

Writer:柴田雅人

※この記事はヨムミル!ONLINEの転載になります。

この記事の全ての画像を見る

放送情報

世界体操カナダ2017 男子個人総合決勝 (2017年10月5日) <録画>
放送時間:2017年10月26日(木) 19:00~22:00

世界体操カナダ2017 女子個人総合決勝 (2017年10月6日) <録画>
放送時間:2017年10月26日(木) 23:30~27日(金)2:00

世界体操カナダ2017 種目別決勝 第1日目 (2017年10月7日) <録画>
放送時間:2017年10月30日(水) 15:00~18:30

世界体操カナダ2017 種目別決勝 第2日目 (2017年10月8日) <録画>
放送時間:2017年10月31日(金) 15:00~18:30
チャンネル名:テレ朝チャンネル2 ニュース・情報・スポーツ
※放送スケジュールは変更になる場合がございます。

キャンペーンバナー

関連記事

関連記事

記事の画像

記事に関するワード