コン・ユの新たな魅力を創出！「新感染」シリーズや韓国版「寄生獣」が注目を集めたヨン・サンホ監督の作家性とは？

本作は、バイオ事故により謎のウイルス感染が拡大する中、ソウルと釜山を結ぶ高速鉄道"KTX"の車内という逃げ場なき密室で勃発するパニックを描く。ソウルでファンドマネージャーとして働く多忙なソグは、幼い娘・スアンが、釜山にいる母親(ソグとは別居中)に会いたいと言い出し、仕方なく釜山行きのKTXに乗車。ところが、ウイルスに感染した1人の女性が直前に乗り込んできたことで車内に感染が蔓延。ひとたび感染者に捕まれば死が待ち受けるという極限状態の中で、熾烈なサバイバルが繰り広げられていく。

主人公のソグを演じた人気俳優コン・ユに加え、腕っぷしが強く人情に厚い男性・サンファ役にはハリウッドでも活躍する"マブリー"ことマ・ドンソク、そのサンファの妊娠中の妻・ソンギョン役にはチョン・ユミを起用。さらに、野球部の仲間たちと共に列車に乗り込む高校生・ヨングク役にチェ・ウシク、そして日本でも活躍するシム・ウンギョンが重要な感染者を演じるなど、実力者たちが集結。ジャンル映画でありながら重厚な人間模様も描かれ、自分と娘さえ助かればいいと思っていた自己中心的な性格のソグだったが、人間の醜悪な本性に直面し、サンファやソンギョンらと生死を共にする中で成長を遂げていく様子は、深い感動をもたらした。

後に、本作の前日譚となるアニメ「ソウル・ステーション／パンデミック」(2016年)も手掛けるなど、ゾンビ作品に並々ならぬこだわりを持つサンホ監督の手腕は、恐怖描写でも存分に発揮されている。噛まれた直後から目が白く濁り、そして凄まじい形相と勢いで人々を襲っていく感染者たちの動きはスピーディーで大迫力。時に大量のゾンビたちが我先にと折り重なりながら獲物に迫っていく地獄絵図のような光景が、臨場感たっぷりに描かれている。

体があらぬ方向に折れ曲がりながらも必死に獲物をむさぼり喰うエクストリームな描写に加え、暗闇では目が見えないというゾンビの設定もユニークで、「感染者だらけの客室からいかにして突破できるのか？」というスリルを倍増させる。KTXに乗り合わせた人々が必死にサバイブするというシンプルな物語ながら、独創的なビジュアルと演出で、飽きさせないバリエーションを構築している。

Kゾンビという一大ジャンルを確立させた「新感染」シリーズの続編として、2020年に公開されたのが、同じくサンホ監督がメガホンを取った「新感染半島 ファイナル・ステージ」だ。

感染爆発が半島を崩壊させてから4年後を描いた本作では、さらに感染者が増殖し無法地帯と化した"アフター・パンデミック"の世界を活写。家族を守り切れず、亡命先の香港で廃人のような暮らしを送っている元軍人・ジョンソク役のカン・ドンウォンは、ロックダウンされた半島に戻り、危険な仕事に挑んでいく物語をスリリングに演じている。

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