深まるマーヴェリックの人間性と熱いドラマ! 合わせて観るとより面白いトム・クルーズ主演「トップガン」の魅力

「トップガン」と聞いてまず思い浮かぶのは、迫真の戦闘機の飛行シーンだろう。通常の映画では、接近戦など危険なシーンは視覚効果で描くものだが、リアルな映像を求めた「トップガン」では海軍の協力でF-14AやF-5E(架空の敵機MiG-28)など実機を飛ばして撮影した。コックピットのシーンはカメラを機内に固定して、実際にトム・クルーズたちの演技を撮影。ロングショットはキャラクターと同じヘルメットを被った、軍のパイロットが代役を務めた。機体の破損など一部にミニチュアや合成が使われたが、多くのシーンが本物。こだわりのビジュアルは、いまだ色褪せることはない。

実は本作をプロデュースしたジェリー・ブラッカイマーとドン・シンプソンは、本作の前にもパイロットを養成する士官学校を舞台にした「愛と青春の旅だち」(1982年)を製作している。しかしこの時は軍の協力を得ることができず、飛行シーンを断念するという苦い経験を持っていた。「トップガン」で2人はまず、海軍の協力を得て戦闘機や空母を調達。かつての雪辱を晴らす迫真の映像を収めることができたのだ。

アメリカ海軍の協力を得て、本物の戦闘機を撮影に投入(「トップガン」)
アメリカ海軍の協力を得て、本物の戦闘機を撮影に投入(「トップガン」)

(c) 2023 Paramount Pictures. All Rights Reserved.

このリアル志向は「トップガン マーヴェリック」でも継承され、海軍の協力で実機を使った飛行シーンが撮影された。俳優たちは厳しいトレーニングを経てF/A-18に搭乗し、強烈なG(重力加速度)を受けながら操縦桿を握るスリリングな姿を披露。超過激スタントで知られるクルーズだが、本作の戦闘機シーンは「ミッション:インポッシブル」シリーズなどとはまた違う緊張感が味わえる。攻撃任務を描いた今作は、実写をサポートする形で多くの視覚効果も投入。ミサイルやフレア、爆発のほか、「トップガン」で活躍したF-14Aの飛行可能な実機が調達できなかったため、F/A-18の映像にCGIのF-14Aの機体が合成された。

「トップガン」が幅広い層から支持されている理由の一つに、キャラクター設計が挙げられる。海軍でもトップクラスのパイロットたちを描いた本作には、主人公の足を引っ張りトップの座を手に入れようとする、いわゆるヒールが出てこない。前作のアイスマンもチーム意識の希薄なマーヴェリックを嫌っていたが、正々堂々と腕を競い合っていた。その関係性は今作も同じ。時に対立しながらも、誰もが目指しているのは任務の完遂のみ。アスリートに通じる彼らの気持ちよさも「トップガン」の魅力なのだ。

正々堂々とトップを争う若きパイロットたち(「トップガン マーヴェリック」)
正々堂々とトップを争う若きパイロットたち(「トップガン マーヴェリック」)

(c) 2023 Paramount Pictures.

同じく「トップガン」のヒロインも単に華を添えるだけの存在ではない。前作に登場したのはトップガンの女性教官チャーリー(ケリー・マクギリス)。女子トイレまで追いかけて口説こうとするマーヴェリックに、一歩も引かず渡り合う凛とした航空物理学者だ。自身のキャリアをしっかり見据え、マーヴェリックを支えながらも彼のためにすべてを投げ出すことなどしない自立した女性として描かれた。そんな彼女にはモデルがいた。もともと前作のヒロインは軍とは無関係の女性と設定されていたが、ブラッカイマーが海軍を訪れた時、長身で美しい女性教官がミーティングに参加した。その聡明さに感化された製作陣は、彼女をモデルにチャーリーを創作。チャーリーを演じたマクギリスも、女性教官と面会し役作りを行った。

実在の女性教官をモデルにしたと言われるチャーリー(「トップガン」)
実在の女性教官をモデルにしたと言われるチャーリー(「トップガン」)

(c) 2023 Paramount Pictures. All Rights Reserved.

一方、今作のペニーはマーヴェリックの元カノで、軍人が集うバーの女性オーナーだ。趣味はヨットとアクティブで、前作のチャーリーと同じく乗っているのはポルシェ。マーヴェリックとよりを戻すが、やはり自分の生き方を大切にする女性として描かれている。今作にはもう一人、トップガン卒業生のナターシャ・トレース中尉(モニカ・バルバロ)が登場した。リアル世界では1994年にトップガン初の女性卒業生が誕生。その後も女性パイロットを輩出しており、そのDNAを受け継いだキャラクターがナターシャなのだ。彼女はブラッドリーと仲が良いが、あくまでパイロット仲間であり恋愛対象として描かれていないところもポイントだ。

安易な男女の恋愛に発展しないのも現代的(「トップガン マーヴェリック」)
安易な男女の恋愛に発展しないのも現代的(「トップガン マーヴェリック」)

(c) 2023 Paramount Pictures.

前作から36年が経過し、軍事テクノロジーは大きく進化。「トップガン マーヴェリック」では戦闘機のドローン化や、パイロットの存在意義が問われている。しかし、最後の決め手になるのは人間の持つ未知数の力――。何かに挑むことの素晴らしさ。それを思い出させてくれるのが「トップガン」シリーズの魅力なのだ。

文=神武団四郎

神武団四郎●映画ライター。「映画秘宝」「MOVIE WALKER PRESS」「シネマトゥデイ」などへの寄稿、パンフレットの執筆、編集など。編書に「別冊映画秘宝 絶対必見!SF映画200」(洋泉社)など。監修書に「テック・ノワール ジェームズ・キャメロン コンセプトデザイン画集」(玄光社)、「メイキング・オブ・007/ノー・タイム・トゥ・ダイ」(玄光社)など。ゴジラよりコング派。

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トップガン[4Kリマスター版]
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トップガン マーヴェリック
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トップガン[4Kリマスター版][吹][木曜洋画劇場 追録ノーカット版]
放送日時:2023年3月12日(日)19:00~、18日(土)10:00~

トップガン マーヴェリック[吹]
放送日時:2023年3月12日(日)21:00~、16日(木)13:00~
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トップガン
放送日時:2023年3月11日(土)18:00~、25日(土)7:45~

トップガン マーヴェリック
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トップガン
放送日時:2023年3月12日(日)17:00~

トップガン マーヴェリック
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