そして、もう一人の主人公で後の"善い魔女"グリンダは、アリアナ・グランデが演じた。最近は7年ぶりの大規模ツアー開催が発表されたことも話題を呼ぶなど、唯一無二の歌声を持つ世界的スーパースター。10歳の頃に舞台を観に行って魅了された彼女は、長年憧れ切望していた大好きな役を演じる喜びやファンとしてのプライドを胸に、普段とは違う音域のトレーニングも重ねたという。

グリンダは、愛情いっぱいに育てられ、華やかな人生を歩んできた人気者。冒頭での寂しげな微笑みに心を掴まれ、エルファバに意地悪をする様も、美しいブロンドを揺らす不思議な仕草もどこか憎めない。名曲「ポピュラー」をコミカルかつキュートに歌い上げ、野心的ではあるが素直で能天気なところも微笑ましく、愛らしいピンクの衣装もよく似合うが、世界的歌姫とは異なる表情と歌声、グリンダになった姿が映し出されている。

作品を通じて親友になったというエリヴォとグランデ。互いの違いを乗り越えて魂が通じ合う姿は、映像を超えて2人の想いが胸に響いてくる。対照的な"ふたりの魔女"の眩しくて切ない物語。心に残る映画体験を与えてくれる本作を見れば、豪華キャストとスタッフが再集結してフィナーレを迎える最終章「ウィキッド 永遠の約束」の公開が、ますます待ち遠しくなるだろう。

文＝中川菜都美