そんな彼女と惹かれ合っていく皇帝側近の花鳥使・蒋長揚(しょうちょうよう)を、リー・シエン(李現)が演じている。寧王の娘である吉安県主と共に劉家を訪れ、何惟芳に出会う。一見軽薄と思わせながら、己の無力さに落ち込む彼女を励ますなど優しい面も。凛々しい顔立ちと洗練された体躯、華麗な古装を爽やかに着こなし、軽薄さの裏には品格が漂う。その立場ゆえに表立って助けることはできないが、陰から何惟芳に寄り添い支え続ける高潔な貴公子をリー・シエンが好演している。

ヤン・ズーとリー・シエンのカップリングといえば、大ヒットラブコメディ「Go！Go！シンデレラは片想い」(2019年)が思い起こされる。同作では、恋愛経験のない奥手だが純粋な天然女子に、"魔王"と呼ばれるほどクールで硬派なツンデレ男子という組み合わせで、ピュアな恋愛模様も人気を博した。

5年ぶりの再共演となった今作で演じるのは、自分の運命を自分の手で切り拓いていく理知的で強く賢いヒロインと、表面的には軽々しく見えても優しさや包容力をさりげなく発揮する貴公子。前回の共演作とはそれぞれ異なるキャラクターながら、黄金カップルぶりは健在だ。様々なキャリアを重ねて大人の余裕や魅力も身に付けた2人の、より深みのある演技や掛け合いもまた見どころだろう。

唐代を再現した圧巻の映像美で、恋愛模様とサクセスストーリーが繊細かつリアルに映し出される本作。「百花の王」と呼ばれた牡丹のごとく、何惟芳が才能を開花させて美しく輝いていく姿は、ヤン・ズーそのもののようだ。実力派女優と名高い演技力と存在感で、魅了していく。強く賢い新たなヒロイン誕生を目撃してほしい。

文＝中川菜都美