冷ややかな視線に背筋が凍る...チャン・ヒョクが体現した"嫉妬心"

"時代劇のカリスマ"と呼ばれるチャン・ヒョクが2度目となるイ・バンウォンを演じ、他を圧倒する存在感が話題となった「私の国(原題)」(2019年)。バンウォンとは、朝鮮王朝の基盤をつくり開国のために尽力するも、父であり初代国王のイ・ソンゲに功労を認められず、冷遇されてきた。その影響もあってか誰よりも野心を持った戦略家であり、自身に都合の悪い人物は一掃し、後に朝鮮王朝第3代国王・太宗にまで上り詰めた人物だ。

そんなバンウォンの精神面を立体的に描くべく、「私の国(原題)」ではノースタントで迫力の武術シーンを見せ、父・ソンゲとの対立や私兵との会話など細部にまでこだわりを持って演じたヒョク。彼がここまで完成度の高いバンウォンを表現できたのは、以前に同じ役を演じた映画『純粋の時代』(2015年)があったからではないだろうか。

「純粋の時代」

(C)2015 CJ E&M CORPORATION, ALL RIGHTS RESERVED

『純粋の時代』の舞台はイ・ソンゲが朝鮮王朝を開いてから7年目にあたる1398年。イ・バンウォンが反対勢力であるチョン・ドジョン一派を首斬した第一次王子の乱が起こった年だ。

ソンゲの五男であるイ・バンウォン(ヒョク)、朝鮮の国境線を守った功績で軍の総司令官に任命されたキム・ミンジェ(シン・ハギュン)、またミンジェの義理の息子で王の婿となり鬱屈した生活の反動から性欲に溺れるジン(カン・ハヌル)。3人の男の前に、宴の席で華麗に踊る妓生カヒ(カン・ハンナ)が現れ、彼らの運命が複雑に絡み合っていく。

「純粋の時代」

(C)2015 CJ E&M CORPORATION, ALL RIGHTS RESERVED

「純粋の時代」

(C)2015 CJ E&M CORPORATION, ALL RIGHTS RESERVED

ストーリーの主軸はミンジェとカヒの愛の物語だが、その中で幼い弟に世子の座を奪われたバンウォンの嫉妬心を巧みに表現し、物語に緊張を与えているのはヒョクだ。本心を隠し飄々とした態度をとっていたバンウォンが一転、静かな怒りから自身の馬を剣で刺し殺すシーンは狂気そのもの。返り血を浴びてもなお、冷ややかな視線を向け続けるバンウォンの心の闇が嫌でも読み取れる。

わずかな時間の中に表現されるバンウォンの精神的な緩急。ヒョクの演技の魅力はここに現れているように思う。また、同作は冒頭の濡れ場や、馬に乗りながら矢を放つアクションなどヒョクが体を張った場面も多数。バンウォンという人物を色濃く印象付けている。

「私の国(原題)」でバンウォンを演じた際にヒョクは、こんなコメントを残している。「『純粋の時代』の延長線だと思って演技に臨んだ。映画では時間の問題で表現できなかったものもあったが、今回解消することができた」――ヒョクが『純粋の時代』というわずか2時間弱の中でここまでバンウォン像を描き出した経験。それがあったからこそ「私の国(原題)」で、あのイ・バンウォン像が確立できたのだろう。"時代劇のカリスマ"たる所以...その一端がここに刻まれている。

文=津金美雪

この記事の全ての画像を見る

放送情報

純粋の時代
放送日時:2020年7月10日(金)20:00~
チャンネル:DATV
※放送スケジュールは変更になる場合があります

詳しくはこちら

キャンペーンバナー

関連記事

関連記事

記事の画像

記事に関するワード

関連人物