浜崎あゆみが、10代半ばながら存在感を放った映画「渚のシンドバッド」

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伊藤がクラスメートの吉田(草野康太)に特別な感情を抱いていることをいち早く察知するのが相原だ。前に通っていた高校で心に深い傷を負ったからこそ、相原は伊藤が「自分はほかの人とは違う」という孤独感を抱えながら生きていることを敏感に感じとる。

イジメにあいながらも勇気を出して吉田に告白したことを伊藤から聞き出し、「けっこう大胆なことできるじゃん?」と茶化すような言い方をするが、伊藤も相原が偏見を持たずに自分に接していることがわかるから、2人の距離は少しずつ縮まっていく。そんな相原が誰にでも優しく敵を作らないタイプの吉田に怒りを爆発させるシーンは印象的だ。吉田の家の倉庫で傘を投げつけ、バイクに蹴りを入れ、そこら中のものをひっくり返し、制御できないほどの感情が暴走する。傷つけない思いやりは時に残酷だということを言葉にせずに身体中で表現する浜崎の演技が刺さってくる。

■さまざまな顔で魅了する浜崎は原石の輝き

ブラスバンド部に所属している優等生の清水(高田久実)と付き合っていた吉田はいつしか相原を好きになり、恋愛模様が交錯する。ある日、相原は伊藤に自分の田舎の話をする。夏蜜柑畑のそばにある浜で泳いだことや畑で寝転がっていると空と地面が逆転したような気持ちになったことをジェスチャーを交えて屈託のない笑顔で話す子供のような相原に伊藤もつられて無邪気な笑顔を見せる。

とはいえ、学校内の人間関係にはウンザリしている相原は夏休みを前に学校を休み、田舎に帰ってしまう。夏蜜柑畑と海の景色のヒントを頼りに伊藤が吉田を連れて会いに行くシーンは、長崎ロケの美しい風景もさることながら、キャップに服とスニーカーで全身白でコーディネートした相原がオシャレでチャーミング。わざわざ自分を訪ねてきた伊藤と吉田に向かい合い、痛みを受け止めようとする在り方には大人の顔も垣間見え、惹きつけられずにはいられない。長回しを効果的に使ったノスタルジックな映像の中、浮かび上がるのは2度とは戻らない切なくてドキドキする季節。まさに思春期真っ只中にいた浜崎の姿が鮮やかに刻みつけられた映画でもある。

文=山本弘子

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放送情報【スカパー!】

渚のシンドバッド
放送日時:11月17日(金)08:30~
放送チャンネル:衛星劇場
※放送スケジュールは変更になる場合があります

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