富田靖子松下洸平が追求する「母と息子のリアリティ」...3度目の共演となった名作舞台「母と暮せば」の裏話から透けてみえる、互いへの格別な信頼関係

写真:宮川舞子

――観る側も、より集中して作品に入り込めそうです。

松下「僕も靖子さんも、"だから作品に没頭できた"というのもあると思いますし、僕たちがよりリアルな時間を過ごすことで、観客はタイムマシーンに乗って当時の2人を覗き見してるような感覚になれるのかなと。そしたら、母と息子のやり取りや、当時の様子に近いものをより濃くお届けできて、観る方の記憶にも残るものになるのではと思っていました」

――3度目で、ご自身のお芝居に変化を感じる点はありますか?

富田「初演の時になぜこれができなかったんだろう...そう、悔やまれることはあります。でも当時はセリフを体に入れることで精一杯で、自ら動いて『こうしたらどうだろう?』と考える余裕もなく。終盤に来てやっと『こういう方法もあったかも』と少し思えるようになったところで終わったんです。
アワアワしているうちに過ぎた初演と比べたら、今は舞台がゴールに辿り着くために自分がやらなきゃいけないことをどこか冷静に見ることができているかもしれません」

写真:宮川舞子

松下「僕は今回でようやく"セリフが150%ぐらい入ったな"と思っています。ある意味ちょっと怖い現象でもあって、油断するとそこに想いがないまま勝手に言葉が出てくるのが危険だなとも思いつつ、相手が喋っている間に『次の自分のセリフなんだっけ?』と思わないのは素晴らしいことだと思いました。余裕ができたので靖子さんの言葉を100%で聞けるんですよ!全力で」

富田「怖いな~(笑)」

松下「ドラマのセリフも一緒に覚える時に、マネージャーに読み合わせに付き合ってもらうことがあるんですが、相手が話している時に次の自分のセリフをまだ考えていて...。その状態のうちは会話劇にならないんだと、最近はすごく実感しています。
普段誰かと喋っている時も、何かの景色を想像したりする余裕があるのは豊かだなと思いますし、今回、靖子さんがセリフを言っている時に色んなことを考えられるのはすごくいいなって」

――母の言葉により耳を傾け、その感情を慮れるということもあるのでしょうか?

松下「はい、まさに。靖子さんの背中を見ながら、今どんなことを思って喋っているのかなと考えたりします。初演はもちろん再演の時もまだやっぱり緊張していたし、探っている部分もあったと思うのですが、今回はそういうことを何も考えずにやれているのが自分でも成長したなと感じています」

 こまつ座「母と暮せば」(2018年版)
こまつ座「母と暮せば」(2018年版)

撮影:宮川舞子

――初演から6年が経ち、2人の絆や関係性も深くなっているのではと想像します。本番期間中、楽屋裏ではどのようなコミュニケーションを取っていますか?

富田「それこそ初演時はめちゃくちゃコミュニケーションを取ったんです。お互いが何者なのか、どんな考え方をしているのか...。台本の一つ一つに対しても細かく話し合った記憶があるんですけど、それ以降は全くナシ!」

松下「あはははは。ないですね」

富田「必要性がなくなった...と言う方が正しいかもしれないですね。『母と息子の関係ってどう?』みたいなことももう聞かないですし、再演ぐらいから作品の話は裏でしなくなったかも」

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放送情報【スカパー!】

こまつ座「母と暮せば」
2018年版
放送日時:2024年12月29日(日)14:30~
2021年版
放送日時:2024年12月29日(日)16:00~
2024年版
放送日時:2024年12月29日(日)17:30~
チャンネル:衛星劇場
※放送スケジュールは変更になる場合があります

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