夏目雅子の凛とした眼差しが刻む、父と愛する男への思い...相米慎二監督作品「魚影の群れ」で見せた女優としての力量

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「魚影の群れ」<4Kデジタルリマスター版><PG-12>
「魚影の群れ」<4Kデジタルリマスター版><PG-12>

©1983/2026松竹株式会社

ドラマ「西遊記」(1978年~1980年)の三蔵法師役で一躍人気を集め、「鬼龍院花子の生涯」(1982年)や「時代屋の女房」(1983年)など、映画でも強い印象を残した夏目雅子。1985年に27歳で亡くなった後も、数々の作品を通してスクリーンに刻まれたその姿は、今なお輝きを放ち続けている。

そんな夏目の演技力を改めて感じさせるのが、1983年公開の相米慎二監督作品「魚影の群れ」だ。吉村昭の同名小説を原作に、青森県下北半島の港町・大間を舞台に、マグロの1本釣りに生きる男たちと、彼らを取り巻く女たちの姿を描く。夏目は、緒形拳演じる漁師・小浜房次郎の娘、トキ子を演じている。

その4Kデジタルリマスター版が、9月9日(水)より日本映画専門チャンネルでテレビ初放送される。さらに今回放送される4K版は、現在開催中の第83回ヴェネチア国際映画祭クラシック部門にも日本から唯一選出されており、1983年の作品が新たな形で世界へ届けられることでも話題になった。

夏目雅子演じるトキ子の父親を演じた緒形拳、恋人を演じた佐藤浩市の圧倒的なリアリティのマグロ漁シーンも見どころの「魚影の群れ」<4Kデジタルリマスター版><PG-12>
夏目雅子演じるトキ子の父親を演じた緒形拳、恋人を演じた佐藤浩市の圧倒的なリアリティのマグロ漁シーンも見どころの「魚影の群れ」<4Kデジタルリマスター版><PG-12>

©1983/2026松竹株式会社

小浜房次郎(緒形)は、マグロ漁に人生を懸けてきた漁師。娘のトキ子(夏目)は、町で喫茶店を営む依田俊一(佐藤)との結婚を望んでいた。俊一がトキ子との結婚のため小浜家の養子となり、漁師になることを決意したことで、父と恋人の間に複雑な感情が生まれていく。

本作で際立つのが、夏目が演じるトキ子の存在感だ。大間での撮影に臨むにあたり、夏目は現地の方言を身につけるため事前にカセットテープを渡され、撮影期間中は方言スタッフの家に通って食事をするなど、その土地に溶け込もうと努めたという。

「魚影の群れ」<4Kデジタルリマスター版><PG-12>
「魚影の群れ」<4Kデジタルリマスター版><PG-12>

©1983/2026松竹株式会社

相米監督といえば、長回しを多用した演出で知られる。本作でも、緒形と夏目が食事をする場面では、朝8時から17時ごろまで、同じ芝居を繰り返しながら撮影が続いたという。助監督を務めた榎戸耕史は後年、夏目が相米組の撮影方法をつかんでいく早さに驚いたことを振り返っている。

その変化は、トキ子という人物の佇まいにも表れている。自転車に乗り、演歌を口ずさみながら坂道を下る場面では、大間の日常に生きる女性としての自然体の姿が印象に残る。一方、父の身支度を手伝い、漁へ送り出す何気ない所作からは、家族としての情愛がにじむ。海に命を懸ける男たちの世界に身を置きながら、トキ子自身もまた、自分の人生を生きようとしている。

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