夏目雅子の凛とした眼差しが刻む、父と愛する男への思い...相米慎二監督作品「魚影の群れ」で見せた女優としての力量

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「魚影の群れ」<4Kデジタルリマスター版><PG-12>
「魚影の群れ」<4Kデジタルリマスター版><PG-12>

©1983/2026松竹株式会社

本作の見どころの1つが、長回しの中で捉えられる夏目の芝居だ。カメラが長時間動き続ける場面では、俳優の立ち位置や動きも重要になる。榎戸によれば、夏目はカメラの動きを把握し、自らも少しずつ動いて画面に収まり続けていたという。

さらに、俊一に海への思いを問いかける場面では、相手だけを見るのではなく海へ視線を向けるなど、何気ない視線の置き方からも、トキ子という人物を細やかに立ち上げていく夏目の芝居のうまさが伝わってくる。

海に出て命を懸ける房次郎と、その背中を追って一人前の漁師を目指す俊一。緒形が実際に巨大なマグロを釣り上げるなど、海上で繰り広げられる男たちの姿は圧倒的な迫力を放つ。そんな彼らに対して、トキ子は陸から父や俊一に自分の思いをぶつけていく。その対比が、夏目演じるトキ子を強く印象づけている。

夏目は本作と「時代屋の女房」で、第7回日本アカデミー賞優秀主演女優賞を受賞。緒形も「魚影の群れ」「楢山節考」「陽暉楼」で同賞の最優秀主演男優賞に輝き、佐藤も「魚影の群れ」「日本海大海戦 海ゆかば」で優秀助演男優賞を受賞した。1983年当時、夏目が女優としてさらに評価を高めていた時期に、その実力を刻んだ1作となった。

「魚影の群れ」<4Kデジタルリマスター版><PG-12>
「魚影の群れ」<4Kデジタルリマスター版><PG-12>

©1983/2026松竹株式会社

1985年に27歳で亡くなった夏目が、「魚影の群れ」に挑んだのはそのわずか2年前。華やかな存在感だけでなく、その土地に溶け込み、相米監督の長回しの撮影の中で身体と眼差しを駆使してトキ子を生きる姿には、当時の彼女が持っていた表現力が凝縮されている。

そして榎戸によれば、相米監督は後に夏目について「もう一度あいつとやりたかった」と繰り返し話していたという。現場を知る人物の言葉からも、夏目が相米作品の中で強い印象を残したことがうかがえる。

4Kデジタルリマスター版では、現存する35mmオリジナルネガを4K解像度でスキャンした映像を修復し、音声もオリジナル音ネガからデジタイズして修復。大間の海や波、そこに生きる人々の表情が、4Kの映像で改めて鮮やかによみがえる。2026年、時を超えてよみがえる「魚影の群れ」で、夏目雅子が刻んだ凛とした存在感を改めて確かめたい。

「魚影の群れ」<4Kデジタルリマスター版><PG-12>
「魚影の群れ」<4Kデジタルリマスター版><PG-12>

©1983/2026松竹株式会社

文=HOMINIS編集部

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