アユニ・Dが野音ライブを語る「生きざまは全部見せられたと思います」

ミュージシャン

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心を閉ざすことをやめ、自分を鼓舞してコミュニケーションを図った

――今回のMTVの放送では、ライブに加えてドキュメンタリー映像も放送されますね。

「これまで、コミュケーションを避けてきた面もあって、そのことで自分を嫌いになってしまう要因になっていたと気づいたんです。意見を言っても聞いてもらえないかなとか、勝手に思ったりして...。だから今回は少し勇気を出して、自分の意思をチームの人に話して共有しようと。すると思った以上に皆が真剣に耳を傾けてくれた。それが自分にとって大きな希望になりました。今回の野音ではPEDROの歴史を振り返るようなセトリにしようと提案してもらって、準備していた新曲もこの日に初披露して特別な日にしようと。とにかく、どんなライブにしたいかとか、この曲にはどんな意図が込められているかなど、くまなく共有しました。そういうライブに向かっていく様子も含めて、ドキュメンタリー映像には収められていると思います」

――田渕ひさ子さんやゆーまおさんなど、メンバーとのコミュニケーションで印象に残っていることは?

「ツアーを回っている時に、ゆーまおさんから『一緒に曲を作ろうよ』と言ってもらえて、今回の新譜の最後にも入れています。ひさ子さんも、女性としても音楽人としても、その生き方を尊敬している方。2人には今自分が抱いている悩みもよく相談していますね。そんな時は本当に向き合ってくれて、ご自分の体験も交えて話してくれます。以前だと私が一方的に心を閉ざしていたので、そんなコミュニケーションは生まれなかったんですね。学生の頃から憧れていた人たちだから、悩み相談なんて恐れ多くてできなかった。だけど、そんな風に勝手に卑下して一歩下がっていたら、同じ舞台に立つメンバーとしてダメだとも思ったし。さっき言ったように自分を鼓舞して、今回はコミュニケーションを取りましたね」

――新作アルバムは、原点回帰がテーマだということですね。

「ツアーを1本終えて、次のツアーまで新譜制作に精を出そうと、今年の頭から動き始めました。最初は曲作りがうまくいかずに、自分らしくない言葉を使ってしまったり、不完全燃焼なところがあったんですね。案の定、全部ボツになって...。そこで、なぜ私の思考回路がこういう状態なのか、レーベルの人と話し合う中で、自分が全力疾走し過ぎて見て見ぬふりをしていた部分とか、自分を毛嫌いしてしまう一面などが続々と露わになった。だから、すべてに目を背けることなく、どんな未来にしたいかをしっかり考える時間を作ってもらいました。その時に、16歳で初めて自分が書いた『本当本気』という曲の歌詞を読み返して、当時の自分が抱えていたコンプレックス、意地や情熱。それが今もまったく変わっていないと気づいたんです。ならば、年齢を重ねた今の自分の自己紹介ソングを作ってみたいと思って...。それで6曲が出来上がった時、自分では意図してなかったけど、"原点回帰"がテーマになっていると感じました。新譜制作にあたって自分自身と向き合った時に、これまで血迷った時にも無我夢中でいろいろなことをやってきたし、必死に音楽に取り組んできた。それは自分にとって絶対に間違いじゃない。人から『昔のアユニのほうがよかった』とか言われることもある。でも、『多くのことを経験し、たくさんの気づきを得た今のほうが、きっともっといいんだよ。なめんなよ!』という気持ちが自然と沸き上がった。そんな思いで、"原点回帰"というテーマを掲げました」

――10月の全国ツアーに向けて意気込みを

「私の場合、今悩んでいることやもがいていることが、ライブというものに如実に表れる。今の自分を目いっぱい落とし込んでツアーを回るから、私自身の生きざまを全国でライブ会場で見せます。ただ、3日経つと考えがまったく変わるというほど、流動的で好奇心旺盛な人間でもある。変わることの面白さ、変わらないことの逞しさ。それもひっくるめて、会場に来てくれた人に伝わったら嬉しいです。もともと私はありのままの自分を人に伝えることが苦手な人間なのですが、音楽活動を通じて人と出会っていく中で、ありのままの自分をそのまま見せることが、本当は簡単なことで、とても素敵なことだって気づけた。今は誤解のないように、嘘をつかずに自分をライブで表現するやり方を覚えている最中なので、10年後くらいには、『ライブは私にとってセラピーです』とか、言えるようなカッコいいバンドマンになれたらいいと思う。そのために今覚えたやり方を今後も続けていきたいですね。今は"好き"と"楽しい"だけでライブをやっているけど、実際にあんなに最高な空間、最高の時間はほかにないから。やっぱり音楽とライブがなければ生きていけないです!」

――最後に今回放送される特別番組に向けてのメッセージをお願いします。

「今回の野音ライブは、命がけと言ったら大げさですけど、チーム一丸で本当にいいものを作ろうと全力で歩んだ日々でした。そんな姿を映像作品として残してもらえたのはすごく嬉しいですし、皆さんに見てもらえることは当たり前のことではない。きっと何か受け取ってもらえるものが必ずあると思うし、ありのままの私を見てほしいです!」

文=渡辺敏樹 撮影=中川容邦

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放送情報

PEDRO 日比谷野外大音楽堂 Live & Document「ちっぽけな夜明け」
放送日時:2025年10月17日(金)21:00~
チャンネル:MTV

MTV LIVE: BiSH Less Than SEX TOUR FiNAL '帝王切開'
放送日時:2025年10月17日(金)20:00~
チャンネル:MTV

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