岡本真夜、1年越しの念願叶ったアニバーサリーライブ

1995年に「TOMMOROW」でデビューし、瞬く間にJ-POPを代表するシンガー・ソングライターとなった岡本真夜。2020年にデビュー25周年を迎えたが奇しくもコロナ禍に見舞われ、予定していたアニバーサリーライブは一旦中止に。2021年7月3日、1年越しの念願が叶い、大手町三井ホールにて記念公演が開催された。

15時30分からの1st、19時からの2ndの2回公演が行われ、レポートをお届けするのは1st。会場では消毒・検温などの感染防止対策を徹底し、前後左右に重なり合わないよう、充分なスペースを保って椅子が配置されていた。開演直前には、「レスポンス(反応)は拍手等、声を出さずに行ってください」と飛沫感染防止への協力を求める言葉を盛り込んだアナウンスが流れた。

『岡本真夜 25th"+1" ANNIVERSARY Concert 2021 ~Thanks a million~』のライブの様子

暗転するとまずはバンドが登場し、観客は拍手で出迎え。最後に岡本が軽やかな足取りでステージに姿を現すと、大拍手。クラップでリズムを取るとファンもそれに倣い、1曲目の「泣けちゃうほどせつないけど」で早くも一体感が広がった。「そのままの君でいて」まで続けて歌い終えると、「皆さんこんにちは、岡本真夜です。やっと会えましたね!」と挨拶。「世の中もまだちゃんと落ち着いていないので、来てくれるかすごく不安だったんですけれども...ちゃんといらっしゃる。すごくうれしいです。本当に感謝しております、ありがとうございます」と客席を見渡し、感慨深そうに言葉を紡いだ。コロナ禍においても配信ライブ等は実施してきたものの、「今日はちゃんと皆さんの顔を見ながら歌えるのでうれしいですし、やっぱり緊張しますね」とコメント。長いキャリアを持ちながらも初々しさを失わない、ピュアな魅力が言葉や佇まいに溢れていた。

跳ねるリズムが小気味よい「宝物」に続き、「学生の時に片想いしている人をイメージして書いた曲」との紹介から「ハピハピバースディ」を披露。可憐な歌声を響かせた。「離れていても」は、映画『デジモンアドベンチャー LAST EVOLUTION 絆』のエンディングテーマとして書き下ろしたAiMへの提供曲で、後述するシングル「旅人よ」のカップリングにセルフカバーが収められている。「皆さんにも、離れているけれどお互い支え合っている友人とか、家族とかがいると思いますので、そういう人たちを思い浮かべながら聴いてください」と語り掛け、柔らかいファルセットを交えながら熱唱。ドラマティックな転調の末のサビには、強い想いを迸らせた。

恋愛をモチーフとした楽曲、中でも切ない曲に関しては「実体験もありますけど、友だちの話を勝手に使っちゃう(笑)」と語ると、「Destiny」は友人に打ち明けられた実話を元に制作したと解説。ピアノ伴奏と歌声のみで表現される静かな序盤から、あまりにも切ないストーリーがまざまざと脳裏に浮かび上がっていく。その後に畳み掛けた「サヨナラ」は圧巻。赤いライトの中、嵐のようにドラムが乱打され、哀切に満ちたギターリフが咆哮。躍動的なリズムに身を揺らしながら、岡本は情感たっぷりに歌唱。セットリスト全体を見れば笑顔の似合う曲が圧倒的に多いが、こういったシリアスな2曲を中盤で披露することで、緩急のメリハリがあった。

後半は怒涛のアッパーナンバーが続く。観客と共にリズミカルな手拍子を鳴らし、楽しくパフォーマンスした「笑顔のおまじない」、「Smile」、そして間髪入れず「アララの呪文」へ。作詞をさくらももこが手掛け、8年にわたって『ちびまる子ちゃん』のエンディングテーマとして親しまれてきたこの特別な1曲を、ファンはイントロを聴いた瞬間から熱い拍手で歓迎した。そしていよいよ代表曲にして不朽の応援ソング「TOMORROW」へ。ライブ前半のMCで岡本は、この日会場へと向かう車中でラジオを聴いていたところ、奇遇にもこの曲が流れた、とのエピソードをうれしそうに、照れ臭そうに明かしていた。ドライアイに悩むリスナーに対する「瞬きをたくさんするといい」というアドバイスの後に流れたそうだが、涙の代名詞としてこの曲が25年以上愛され続けている証である。

本編ラストを「FOREVER」で締め括ると、大拍手はすぐにアンコールを求める手拍子へ。再登場した岡本はグランドピアノの前に座り、やはり代表曲の一つであるバラード「Alone」を弾き語りで披露。2番からはヴァイオリンも加わってよりドラマティックに、曲の世界へと深く引き込んでいく。歌い終えて「大好きな曲です」と愛おしそうに述べると、続く最新曲「旅人よ」への想いを語り始めた岡本。歴史シミュレーションゲーム『三國志14』のエンディングテーマ曲として書き下ろした曲で、デモは15、6年前から温めていたという。色とりどりの淡く透けるようなライトの下、オリエンタルなメロディーラインに乗せた古語の歌詞をしっとりと歌唱。二胡の旋律やコーラスも美しく織り重なり、神秘的な世界を立ち上げていた。「今日この日を迎えられたことが夢のようで、皆さんのお顔を見ながら...想いもちゃんと伝わりますし、本当に1日でも早く、もう少し自由に暮らせる日が戻るといいなと願っております」と岡本は語り、「こうしてまた皆さんとライブ会場でお会いできるのを楽しみにしております」と次なる再会への願いを述べ、「是非皆さん、これからも変わらず応援よろしくお願いします。今日はありがとうございました!」と挨拶。「ANNIVERSARY」を最後に届け、記念公演の幕を閉じた。

「TOMORROW」がそもそも友人を励ますために書かれた曲だというエピソードは有名だが、岡本の楽曲がいつも温かく響くのは、どんな大ヒット曲も、身近な誰かへの想いを起点に生み出されているからかもしれない。振り返れば、25年以上にわたり、大きな災害に見舞われた人々が苦しみを乗り越えようとするたび、彼女の音楽は求められ、その心に寄り添ってきた。未曽有の事態に直面している2020年代の今もまた、果たす役割はきっと大きい。今回のライブは9月にWOWOWプラスで放送予定。会場に満ちていたあの温かく包み込まれるような空気感を是非感じたい。

文=大前多恵

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放送情報

岡本真夜 25th"+1" ANNIVERSARY Concert 2021 ~Thanks a million~
放送日時:2021年9月26日(日)19:00~
チャンネル:WOWOWプラス 映画・ドラマ・スポーツ・音楽
※放送スケジュールは変更になる場合があります

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