桃井かおりのセクシーなモーニングコールは必見!鹿賀丈史柄本明をはじめ、昭和の俳優たちの演技合戦が楽しめる異色のホームコメディ「木村家の人びと」

⒞1988 フジテレビジョン

本作はバブル期ならではのパワフルな家族の極端な描写が面白く、木村家の隣人で小金稼ぎのライバルとなる高倉家との争いがエスカレートするところなど、前半は笑いどころが満載。特に出色なのは桃井かおりの痛快なまでのはじけた演技だ。早朝、弁当を作りながらセクシーな喘ぎ声でモーニングコールをする場面で、「...起きましたぁ?」と急に素に戻るところなど、まさに秀逸である。前半こそコメディ要素が強いものの、後半は次第にシリアスな展開となる。太郎への愛情から小金稼ぎを辞めることを決意する肇の葛藤など、鹿賀の繊細な演技が身に染みる。鹿賀はパワフルな芝居で押せる役者だが、細かい演技も巧みであり、本作は彼の持ち味を滝田監督が見事に引き出しているという印象だ。桃井もまた、起伏のある芝居で抜群の存在感を発揮。さすがという演技を見せてくれる。

脚本を担当した一色伸幸も「バブルを描かせたら間違いなし」という人だけに、本作のストーリー運びもテンポ感が抜群。1987年公開の「私をスキーに連れてって」などでも発揮された軽妙なセリフの応酬が心地よい。今見たらコンプラ的に難しいと思われる場面も多々あるが、当時の空気が生き生きと伝わってくるので、今見るとより楽しめるかもしれない。ユーモラスな作品でありつつ、家族愛やお金の本質などを考えさせられる作品にもなっており、人間ドラマとしても十分見ごたえがある。映画「木村家の人びと」は、バブル期を知らない現代の若い人にもすすめたい一作だ。鹿賀丈史、桃井かおり共に昭和を代表する俳優のひとりだが、近年の俳優と比較しても強烈な個性を放っている。いわゆる替えの利かない役者の典型だといえるだろう。近年はクセの強い役どころが多い柄本明が、常識人的な好人物を演じているのも新鮮だ。ほかにも風見章子、加藤嘉、多々良純、竹中直人、小西博之、清水ミチコといった「昭和感」抜群の俳優たちが脇を固め、演技合戦が満喫できる一作としても貴重な映画である。

文=渡辺敏樹

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放送情報【スカパー!】

木村家の人びと
放送日時:6月21日(金)21:00~
放送チャンネル:映画・チャンネルNECO
※放送スケジュールは変更になる場合があります

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