北野武監督が体現する「本能寺の変」...映画「首」にみる「北野イズム」

北野武が原作・監督・脚本・編集を務めた「首」
北野武が原作・監督・脚本・編集を務めた「首」

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メインキャラクターが男性で占められるのは、北野武監督の志向ではあるが、今回の「首」はその部分を過去の作品以上に徹底。シンプルに「男たちの覇権争い」が浮き上がってくるうえに、登場する多くの人物が衆道(同性愛)に勤しみ、愛欲もストレートに繰り広げているのは、過去作品に比べて野心的。このあたりは監督デビュー以前、俳優=ビートたけしとして出演した大島渚監督の「戦場のメリークリスマス」や「御法度」のスピリットを受け継いだとも読み取れる。ただ登場人物たちのホモソーシャルな結びつきは、北野作品に一貫しており、「首」での男たちの関係も作家性を象徴する。

こんな風に紹介していくと、シリアス&ハードな作風を想像させるが、むしろ「首」は痛快コメディとして楽しめる部分が意外に多かったりする。しかも北野武というより、ビートたけしのノリで、まるでコントのようなシーンを挿入。このあたりは「みんな〜やってるか!」や「龍三と七人の子分たち」に似ている。演じる俳優たちも、明らかに素(す)に戻って笑っていたりして、権力争いのバイオレンスやサバイバルの中で、絶妙なアクセントになっているのだ。

シリアスさと軽やかさの自在な行き来を成功させた要因、そのひとつが北野映画でおなじみのキャストの集結。「Dolls」以来となる、明智光秀役の西島秀俊は、その後の俳優としての進化が重なって、余裕の熱演。「アウトレイジ」でそれまでのイメージをガラリと変え、振り切った怪演をみせた加瀬亮は、織田信長役で完全にリミッターを外して、観ているこちらも呆気にとられるほど。そして羽柴秀吉役は、年齢設定を無視して監督自身が演じているが、この自由さも北野作品らしくて微笑ましい。また、北野組に初参加のキャストにも光を当てる監督の志向は、中村獅童、木村祐一ら何人もの役どころで発見できる。

「本能寺の変」という、あまりに有名な歴史に向き合うという、北野武監督の初の試みながら、あらゆる方向から監督の作家性、大好きなテイストが詰まり、鮮やかにまとまったのが「首」だと言えるだろう。


文=斉藤博昭

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首<R-15>
放送日時: 8月11日(日)22:00~、8月14日(水)22:00~、8月18日(日)23:10~
放送チャンネル: 日本映画専門チャンネル
※放送スケジュールは変更になる場合があります

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