(C)セントラル・アーツ
工藤は都内のとあるビルに事務所を構えていて、人探しや身辺調査など、さまざまな依頼を受けて奔走する。本作にはハードボイルド的な要素はもちろん、コメディシーンもふんだんに取り入れられていて、非常に親しみやすい作品となっている。
工藤が淹れたこだわりのコーヒーを、仕事の依頼に訪れたシスターに褒められて無邪気に喜ぶ姿は、表情の変化に見入ると同時に、素直で人の良い印象を受ける。事件の関係者が煽るような電話をかけてきた時には、その直前に痛めつけられて出た鼻血を止めているティッシュを、鼻息で吹き飛ばしたりもする。そのタイミングがあまりに良すぎて、思わずクスッっとしてしまうほどだ。
また、裏組織に捕まって痛めつけられた時は、「もう、首突っ込まないっす...」としおれた声で言い、ある組織の秘密を写したフィルムを奪われないよう飲み込んだまではいいが、チンピラに首を締められ情けない顔でもがくシーンもある。
本作の松田の演技は、細かいセリフが多い上にテンポが良く、そのためコメディ部分を含め自然とシーンに魅入ってしまう。また、強いだけでなく弱い部分も露わにするところに工藤の人間らしさを感じられ、おのずと親近感が湧いてくるのだ。
■松田優作の真骨頂、触れたら切れそうなハードボイルドシーンも必見!
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松田の真骨頂であるハードボイルドなシーンも、見応えたっぷりだ。例えば第2話、本性が明らかになってきた依頼人とお寺の前で別れる時は、その後姿をえぐるような鋭いまなざしで見送る。また第3話で、工藤と顔見知りの人物を痛めつけたチンピラに対しては、迫力のある三白眼で睨みつけたりもする。
第4話で事件の重要人物に銃を向けた時の、圧がありつつも「すいません、今、ビビっております」と素直に白状する場面などは、ハードボイルドな部分と人間臭さを併せ持つ工藤という人物がしっかりと感じられる、印象的なシーンと言えるだろう。
「探偵物語」での松田の演技には、孤高の人物像を体現した「遊戯」シリーズや「野獣死すべし」などの作品とは、また違った"味"がある。町の人々との信頼関係を大切にしたり、何かと絡んでくる刑事や裏組織の人間を手球に取ったり、賑やかで人間味に溢れる工藤は見ていて楽しく、その活躍をずっと見ていたくなるほどに魅力的だ。
松田は1989年公開の映画「ブラック・レイン」でハリウッドデビューを果たすも、同年、40歳の若さでその生涯を閉じた。日本にとどまらず、世界にまで羽ばたいた松田の代表作の1つとして数えられる本作。ぜひ、その演技をじっくりと味わいながら見てほしい。
文=堀慎二郎











