ニュースター・渡哲也を誕生させた一本!藤竜也の存在感でオリジナリティを増した映画 「嵐を呼ぶ男」(1966)

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⒞日活

中盤の山場である「ドラム合戦」では、指を怪我しながら苦悶の表情でドラム対決に挑む点は共通しているものの、石原がスター性を感じさせる演奏と歌声で魅了するのに対し、渡は全身で叩きつけるパワフルな演奏を見せる。気迫とスタミナで勝負する「闘う演奏」だ。本作は、あらゆる面で、石原裕次郎のコピーではない、渡哲也という新しいスター像を示した作品として仕上がっている。ここで重要なのは、渡の未完成さを"弱点"ではなく"魅力"に昇華させた点であり、だからこそ、観る者が共感し、応援できる主人公になりえたのだろう。

■主人公の弟役・藤竜也とヒロイン役・芦川いづみも好演

また、藤竜也の存在も本作のオリジナリティを高める要素となった。本作での渡と藤の関係は、「エネルギーの衝突」を感じさせる。渡の芝居が怒りや感情を押し出す爆発型なのに対し、藤はナイーブで感情を抑えた抑制型の演技だ。兄弟を演じる2人の対比が、渡の「衝動性」を強調し、藤の「繊細さ」を際立たせている。音楽とカーレースという違いはあるが、2人とも情熱を燃やす対象があり、エネルギーを秘めている。性質の違う青春像を鮮やかに成立させた点は、オリジナル版にない魅力だと言える。青山恭二が演じた前作の英次は、クラシック音楽に打ち込む従順な若者で、藤のような秘めたエネルギーはなかった。

ヒロイン役の芦川いづみも好演している。芦川は前作でも英次の恋人役として出演しているが、渡の激しい感情を否定せず、同時に距離感も保つ大人の女性として、絶妙なヒロイン像を表現。彼女の受ける芝居が巧みだからこそ、渡哲也の暴走しがちな危うさに輪郭が生まれる。清楚で上品だが親しみのある美弥を演じる芦川が魅力十分で、2人が初めて結ばれるシーンでの芦川の演技は特に絶品だ。藤竜也と共に、本作を演技面で支えた功労者と言える。もっとも、渡の活かし方を含めて、藤、芦川を絶妙に配した舛田監督の手腕こそ評価されるべきだろう。

1966年版「嵐を呼ぶ男」は、単なるリメイクの枠を超えて、ニュースター・渡哲也を生み出した完成度の高い一本である。前作があまりに有名なために後年での印象こそ薄くなってしまったが、見どころ十分の隠れた名作と言ってもいい。渡の荒削りな魅力を、藤と芦川が受け止めて際立たせることで成立している点も興味深い。スター誕生の物語である価値に加えて、アンサンブル演技の成功例として、映画史における重要な意味を持った作品ではないだろうか。

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文=渡辺敏樹

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