
染谷は現在、立て続けに話題作に出演しており大活躍中。4月期に放送していたドラマ「田鎖ブラザーズ」では岡田将生との共演が注目を浴び、5月に公開された主演映画「廃用身」での怪演も話題となった。7月には、主演映画「チルド」の公開も控えている。
染谷が同作で演じる徹は雇われ店長としての仕事を滞りなくこなす青年だが、言葉少なで空気も重く、どことなく鬱屈とした雰囲気だ。実は徹は一流ホテルへの就職を目指していたが、震災の影響もあってその道を閉ざされていた。しかし家族や沙耶には、お台場の一流ホテルで働いていると嘘をついている。
劇中で徹が「なんで俺がこんな汚ねぇところで...」とつぶやくシーンがある。報われない思いを抱えながら、望まぬ場所で働くことへの鬱憤。そんな空気がじわじわと伝わってくる秀逸な演技は、染谷ならではだろう。
この日、徹にはさまざまな出来事が襲いかかる。ホテルで行われるAV撮影の女優が妹だったり、暴力的な客に殴られたり。さらには、ありえない場所で沙耶の姿を見てしまったりもする。
そのような状況で、言いにくそうにしながらも言うべきことを言ったり、絶望を抱えたように廊下に座り込んだり...染谷は丁寧な演技で徹の心情を積み上げていく。そしてそれが、終盤の感情の爆発につながっていく。それまでの積み重ねがあるからこそ、終盤の徹の心の動きに納得することができ、それを十二分に伝える染谷の力量も実感できる。
■揺れる心情を伝える前田敦子の繊細な演技も必見!

もう1人の主人公・沙耶を演じるのは前田。2月には14年ぶりとなる写真集「Beste」を発売。7月スタートのドラマ「ファーストクライ 母子救命救急班」では、セレブ病院のコンシェルジュ役で出演する。
本作では、前田の繊細な演技に注目だ。冒頭、部屋で徹といるシーンでは、デビューの可能性を語りながらも空気は重く、視線はどこか遠くを見ているよう。沙耶は3人でバンドを組んでいるが、自分だけがデビューするという話があり、迷っているようだ。
さらにその日、沙耶は業界関係者の誘いを受ける。自分だけデビューという理由が、そこにある。受ければデビューできるが、まだ心を決めかねている。そんな雰囲気が、沙耶の表情ににじみ出ている。沙耶の登場シーンはあまり多くないが、そんな中でも、揺れる心情をしっかり表現する前田の演技は確かなものと言える。それが伝わってくるからこそ、終盤の沙耶の涙が胸にしみるのだ。
ラブホテルという特異な空間で繰り広げられる数々のドラマはもちろん、染谷と前田の秀逸な演技を味わえる本作。ぜひじっくりと鑑賞していただきたい一本だ。
文=堀慎二郎











