佐藤浩市の人間味、斉藤由貴の静かな強さ...対照的な演技が光る相米慎二監督作「あ、春」

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「あ、春」<4Kデジタルリマスター版>
「あ、春」<4Kデジタルリマスター版>

(C)1998/2026 株式会社トラム/松竹株式会社/松竹ブロードキャスティング株式会社

佐藤が演じる紘は、社会的には順調な人生を歩んできた男だが、家庭では必ずしも周囲の気持ちを汲み取れていない不器用さを抱えている。

笹一の無遠慮な振る舞いには露骨に苛立ち、口をとがらせて反発する。佐藤はそんな紘の感情を隠さない態度から、仕事と家庭を背負い込む男の余裕のなさを巧みに演じてみせる。

父親を知らずに育った紘が、突然現れた笹一に戸惑うのも無理はない。しかし、周囲を顧みず自分の考えを押し通そうとする紘の姿には、長年身につけてきた価値観から離れられない頑なさもうかがえる。

笹一との出会いは、そんな紘にとって父親を知るだけでなく、自分自身をも見つめ直す機会になっていく。

「あ、春」<4Kデジタルリマスター版>
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(C)1998/2026 株式会社トラム/松竹株式会社/松竹ブロードキャスティング株式会社

そんな紘と見事なコントラストを描き出すのが、斉藤演じる妻・瑞穂だ。夫の振る舞いに心を痛めることはあっても、現状をただ悲観したり、紘を突き放したりするだけではない。

突然現れた義父の笹一に対しても、紘とは対照的な態度で接し、家族の一員として迎え入れようとする。斉藤は声高に感情を訴えるのではなく、相手を受け止めようとする姿勢を通して、瑞穂の穏やかさと芯の強さを観る者に感じさせる。

また瑞穂は、仕事に追われる紘には見えていないものをしっかりと見つめており、それゆえに傷ついている。互いへの思いがありながらも、その気持ちをうまく伝えられない夫婦。

感情をあらわにする佐藤と、内に複雑な思いを抱えながら相手と向き合う斉藤の芝居が、そのすれ違いを浮かび上がらせる。北村道子が手がけた瑞穂の色彩豊かな衣装も、時代の空気と作品の個性を感じさせる見どころの1つだ。

「あ、春」<4Kデジタルリマスター版>
「あ、春」<4Kデジタルリマスター版>

(C)1998/2026 株式会社トラム/松竹株式会社/松竹ブロードキャスティング株式会社

そして、2人の間に波乱を巻き起こす笹一を演じる山﨑努の存在も欠かせない。

突然息子の前に現れ、周囲の都合などお構いなしに振る舞う笹一。周囲を困らせる一方で、その存在は家族それぞれの内面や関係性を浮かび上がらせていく。自由奔放な振る舞いの合間にふと寂しさを感じさせるところにも、山﨑ならではの芝居の味わいがある。

また、紘の母・公代を演じる富司純子のしたたかな佇まいも印象に残る。家族の過去を知る公代の言動からは、その本心を容易にうかがい知ることができない。笹一とはまた違った形で、紘をはじめ周囲の人々を翻弄する存在となっている。

父親と名乗る笹一の突然の登場を機に、これまでの生き方を問い直される紘と、そのそばで家族を支えようともがく瑞穂。

佐藤浩市の不器用な感情表現と斉藤由貴の静かな強さが交わる相米慎二監督作品「あ、春」<4Kデジタルリマスター版>。可笑しさの奥に、家族それぞれの孤独や思いがにじむ人間ドラマを、ぜひ放送で堪能してほしい。

文=HOMINIS編集部

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