最近は棋士の食事が注目されるようになった。少し前では丸山忠久九段、最近では佐々木勇気八段もタイトル戦で大量の食事を取ることで有名だが、その元祖は加藤かもしれない。60代を過ぎても昼、夜ともにうな重を注文するなど、その食欲は衰えるところを知らなかった。また、タイトル戦で大量のミカンを頼み、対局相手も張り合ってお互い食べ続けたこともあるという。歴代最長の現役期間、最多対局数を誇る加藤だが、一度も休場や不戦敗がなく、その体力と健康を維持できたのもこの食欲あってこそだろう。
加藤が名人を奪取した第40期名人戦七番勝負は激闘だった。名人戦は通常、4月に始まってフルセットになっても第7局が6月に行われるが、この時は3勝3敗、2千日手1持将棋で10局目に突入した。現在は千日手になっても即日指し直すことが多いが、この頃は日を改めて対局している。最終局は7月末と、4ヶ月近くに渡る長丁場で、名人初挑戦の第19期から、21年越しでの獲得となった。この最終局でも、一分将棋の中で相手の玉を即詰みに打ち取っている。似たような例では第5期叡王戦七番勝負での、2持将棋1千日手でフルセットになったシリーズもある。
加藤は藤井聡太竜王・名人のデビュー戦の相手にもなった。この時も昼食休憩中に指す新手を披露し、藤井を驚かせている。
このようにエピソードに事欠かない加藤。棒銀と矢倉を得意とする重厚な居飛車党だ。数多くの名局を残しているので、機会があれば魂のこもった棋譜を並べてほしいものだ。特に消費時間が分かるものであれば、「一分将棋の神様」のすごさを体感できるだろう。
文=渡部壮大



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