磯村勇斗​​×岸井ゆきの​​、映画「若き見知らぬ者たち」で「同じ苦しみを背負った」

岸井ゆきの、磯村勇斗
岸井ゆきの、磯村勇斗


――撮影を終えてしばらく経っていると思いますが、お互いの印象について教えてください

岸井「畑から帰ってきたときも泥だらけで、(役づくりで)とても痩せられていて、ずっと(磯村さんのことを)彩人だと思って現場にいたし、映画に埋没していたこともあって、楽しくおしゃべりすることもなかったんですよ。磯村さんがクランクアップされたあと、福山さんの試合のシーンでサプライズでいらっしゃったんですけど、すでに髭を剃られて、初めて私服も見たから『彩人じゃない人がいる!』と思って、悲しくて涙が出ちゃいました」

磯村「行かなきゃ良かったと思いました(笑)」

岸井「それくらい私のなかで彩人は彩人だったし、『私は磯村勇斗さんとコミュニケーションをとっていなかったんだな』と自覚した瞬間でしたね。今でもこうやって衣装を着られている磯村さんに会うと『あれ?』って思うというか。それくらい撮影の前後で印象が変わりました」

磯村「今回初めましてだったんですけど、どっぷり(作品に)浸かっている状態でお会いしたので、僕も日向として見ていました。(本編は)明るい部分もあったけど、100%の明るさではなくて、ずっと暗かったんですよね。だから、終わってからみんなでごはんを食べに行ったり、映画祭でお会いしたりしたとき、ふと『顔がめっちゃ明いな』と思って」

――私も作品を拝見したばかりだったので、磯村さんにも岸井さんにも同じことを思いました(笑)

磯村「『こんな明るい人だったのか』という驚きがあったし、顔のトーンも1つ上がってる。改めてあの現場ではお互い別人でいたんだと思いました。役者さんとしても尊敬しているので、またご一緒したいです」

磯村勇斗
磯村勇斗

――タイトルにかけて、お二人も演技を始めたころは「若き見知らぬ者」だったと思います。当時、どんな若者でしたか?

磯村「やりたがりな感じでしたよ。初めて舞台をやった10代のころから20代前半までは作り込んで芝居をして...みたいな状態で、とにかくかけ算をする芝居の作り方をしていました。表現をしたくて仕方なかったんだと思います」

――いわゆる演技の引き算はできなかったと

磯村「引き算なんて知らなかったです。『引くことなんて絶対しない。むしろパワーで進んでいく!』みたいな。今はいろいろ知って学んだこともありますが、当時は前に前に進んでいたと思いますね」

岸井「私は、いわゆる小劇場と呼ばれるところに出ていたんですけど、演劇を始めたころはもう演劇をやりたくてやりたくて...。本当にお金がないので、バイトを3つとかかけもちしながら演劇をやって『私はこれでいいんだ。これがいいんだ』と思っていました」

――大きな目標というよりは現状で満足というか

岸井「そうですね。本多劇場とか、シアターコクーンとか、プレイハウスとかに立ちたいとは思っていたけど、それで生活が良くなるとか、そこまで頭が回ってないというか。『必死に働きながら私は演劇をやっていくんだ』みたいな謎のエネルギーがありました」

――彩人は作品のなかでさまざまな壁にぶつかります。おふたりは壁に当たったとき、どう対処されますか?

磯村「僕は壁が高ければ高いほど興奮するんですよ」

岸井「え〜!」

磯村「壁を見ると興奮しちゃってぶち破りたくなるし、登りたくなります。登った先には新しい自分が待っていると考えると、それに出会うために『苦しくても頑張ろう』と思うんですよね。その壁が、どんなに分厚くても高くても何年かかろうとも、徐々に削っていく作業が好きなんだと思います」

――そのやり方で折れることはなかったんですか?

磯村「折れたことはないかもしれないですね。なんとかよじ登ってこられたかなと思います」

岸井「興奮するって新しい。楽しいってことでしょ?すごいな〜。私は自分の目線だけで壁を見るのが怖いので、『私にはこういう壁があるんです』って他の人にも知ってもらう。まず土台から一緒に話をして、聞いて、階段を作っていく感じですね。壁をぶち破る発想がないんですよ。ちゃんと正式に登っていきたい」

磯村「なるほど(笑)」

岸井「すごくゆっくりなんだけど、でも見える景色は高いじゃないですか。だから、興奮はしないけど、着実に登っていきます。とにかく焦らされるのが苦手なので、まず一旦壁を眺めて、『こういう壁か』と理解してからゆっくり登りはじめますね」

ーー岸井さんはコント番組「SICKS ~みんながみんな、何かの病気~」(テレビ東京系)に出演されていましたが、そういった新しいジャンルの挑戦も違った壁だったと思います。いかがでしたか?

岸井「あれは私側から破るのがあまりにも難しかったから、(共演者だったオードリーの)若林さん側からぶち破ってもらいました。若林さんに破ってもらったあと、そこを私が『すみません。ありがとうございます!』と言いながら通るみたいな感じでしたね」

取材・文=浜瀬将樹 撮影=MISUMI

磯村勇斗ヘアメイク=佐藤友勝
磯村勇斗スタイリスト=笠井時夢

岸井ゆきのヘアメイク=根本亜沙美
岸井ゆきのスタイリスト=森上摂子

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映画情報

映画「若き見知らぬ者たち」​​
磯村勇斗 岸井ゆきの 福山翔大 染谷将太
伊島空 長井短 東龍之介 松田航輝 尾上寛之 カトウシンスケ ファビオ・ハラダ 大鷹明良
滝藤賢一 / 豊原功補 霧島れいか
原案・脚本・監督:内山拓也
(C)2024 The Young Strangers Film Partners
10月11日(金) 新宿ピカデリーほか全国公開

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