小林旭の貫禄とカッコよさが全開!陣内孝則ビートたけしの存在感も際立つ「修羅の伝説」

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「修羅の伝説」に出演する小林旭
「修羅の伝説」に出演する小林旭

(C)東映

石原裕次郎と並ぶ日活の大スターとして君臨し、日活の黄金時代を築いた小林旭は、1972年に東映に移籍した。東映では「仁義なき戦い」シリーズの武田明役はまさにはまり役で、小林の人気をより高めることになる。

歌手活動でも知られ、「昔の名前で出ています」などをヒットさせ、その後は監督業に進出するなどして、一時は俳優業から離れていたのだが、彼が10年ぶりの映画出演を果たしたのが1992年公開の東映映画「修羅の伝説」である。

■小林旭の相棒的な立ち位置で活躍する陣内孝則も好演

小林旭が体現する男の美学・任侠精神に圧倒されること間違いなし
小林旭が体現する男の美学・任侠精神に圧倒されること間違いなし

(C)東映

本作は、勝目梓の小説「掟の伝説」を原作とする、東映得意の王道的なヤクザ映画だ。地方都市に根を張る暴力団の笠部組若頭の大滝周二(小林旭)が、関西の一大暴力団と敵対する中で、悪徳企業と政治家に立ち向かう任侠アクション。

笠部組が懇意にしていた建設会社社長の葬儀帰りに、笠部組長(三木のり平)が襲撃された。鉄砲玉を取り押さえて事なきを得たが、その男・富沢(本田博太郎)の背後には、関西系の一大組織・小田一家が暗躍していたことが判明。大滝は友人でもある刑事の桐野(平幹二朗)から、組長襲撃の裏に企業や政治家たちの利権争いが絡んでいたことを知らされる。

やがて抗争は泥沼化し、全面戦争の様相を呈していく。そこに服役していた本堂(陣内孝則)が出所。本堂は大滝に恩義を感じており、力を貸したいと参じたのだった。戦況はいっそう激化し、ついに組長が暗殺されるに至り、大滝の怒りは臨界点に達する...。

小林演じる大滝周二は、仁義に厚い昔気質の極道だ。部下には厳しいが、温情を持って接し、面倒見がいい。かつて自分の命を狙った男である本堂の後ろ盾にもなるほどの男である。笠部組は小さな組織だが、自分の組を守るために巨大な敵にも死力を尽くして挑む。そんな大滝のカッコよさは、小林が演じるからこそ説得力があるし、味わい深い。異郷のフィリピン娘・友子(ルビー・モレノ)を深く愛し、彼女の存在が大滝の支えなのだが、2人のシーンの哀調が映画のアクセントにもなっている。

小林の相棒的な立ち位置で、クライマックスの対決シーンで大暴れするのが、陣内孝則演じる本堂だ。本作での陣内のカッコよさも出色で、見栄えがよく迫力十分。大滝に再会して力を貸したいと申し出る場面で、「もう堅気の身なんだから、奥さんを大事にしろよ」と言う大滝に、命を捨てる覚悟で抗争に参戦する。

真っ直ぐに大滝への感謝を伝える純粋さを表現する演技が見事だった。当時はトレンディドラマで活躍するなど、軽やかで飄々として役柄を得意としていた陣内だが、任侠映画との親和性も高いことがわかる。

また、ビートたけしが橋本組代行・矢代役で登場する。抑えた演技だが、ヤクザ役が得意な人だけに、本作でも存在感は抜群だ。既に監督業に進出して多忙な時期だったため、本作ではほぼワンシーンで、特別出演とクレジットされている。それでも、組の幹部らしき風格をたっぷり漂わせ、セリフにも重みがあるのは流石だ。

■巨大な利権や政治の腐敗という社会的背景も描き出す

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