安藤昇、生誕100年のいま味わいたい俳優の迫力 唯一無二の存在感が光る「男の顔は切り札」「懲役十八年」

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「懲役十八年」
「懲役十八年」

(C)東映

衛星劇場と東映チャンネルによる共同企画「安藤昇 生誕100年記念特集」が、この春あらためて注目を集めそうだ。1926年5月24日生まれの安藤昇が生誕100年を迎える節目に組まれた特集で、衛星劇場では「血と掟」など俳優転向初期の作品が、東映チャンネルでは「男の顔は切り札」「懲役十八年」をはじめとする出演作がラインナップされている。俳優として歩み始めた頃の作品と、その存在感がよりくっきりと刻まれた作品の両方に触れられる構成になっているのも、今回の特集の魅力だろう。なかでも東映チャンネルで放送される2作は、安藤昇という俳優がスクリーンの中でどんな強さを放っていたのかを、あらためてはっきり教えてくれる。

安藤の歩みは、その鮮烈な経歴とともに語られることが多い。戦後、渋谷を拠点に安藤組を率い、1964年に組を解散。翌1965年には、自身の手記をもとにした「血と掟」で俳優へ転身した。さらに松竹と専属契約を結びながら、「五社協定」の時代に東映作品「懲役十八年」で主演を務めている。こうした足跡だけでも十分に強い印象を残す人物だが、作品を見てまず引きつけられるのは、やはり俳優としての存在感だ。芝居を大きく見せなくても、画面に入ってきた瞬間に、その人物がそれまで生きてきた時間まで見えてくるような力がある。視線の置き方や立ち姿、言葉を発する前の間にまで、重みが宿るところに安藤昇という俳優のおもしろさがある。

安藤昇の鋭いまなざしが印象を残す「男の顔は切り札」
安藤昇の鋭いまなざしが印象を残す「男の顔は切り札」

(C)1966 松竹株式会社

特に安藤の俳優としての凄みを感じる作品が、1966年公開の「男の顔は切り札」だ。監督はマキノ雅弘、脚本は宮川一郎。昭和初年の深川を舞台に、解散した梅津組の親分殺しをきっかけに騒動が広がっていく任侠映画で、安藤は岩上を演じている。岩上は浩次郎の戦友として現れ、物語の緊張感を一段引き上げていく存在だ。行方知れずになっていた恋人との再会も、この役に忘れがたい情の深さを与えている。義理や人情、裏切りや復讐が交錯する任侠映画らしい一作だが、その中で安藤の芝居は、画面にほどよいざらつきと熱をもたらしている。

「男の顔は切り札」で印象に残るのは、安藤が感情を前に出しすぎないことだ。怒りや未練をことさらに強く見せるのではなく、抑えたまま滲ませていく。その静かな芝居があるから、岩上という男が背負ってきたものの重さがしっかり伝わってくる。任侠映画らしい情の世界の中でも、安藤の存在にはどこか生身の感触がある。だからこそ、岩上の痛みや執念が大げさなものにならず、この男自身の実感として画面に残る。

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