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「PLAN75」の早川千絵監督がメガホンをとった同作は、11歳の少女が大人の世界をのぞきながら、人々の心の痛みに触れていくひと夏の物語。早川監督が自身の記憶と感情の断片を投影しながら、少女の日常を繊細な筆致で描写したという。主人公・フキを演じた鈴木も当時11歳で、そのナチュラルな佇まいと演技が評価され、キネマ旬報ベスト・テンで新人俳優賞に輝いた。
河合が演じているのは、夏休み中のフキが出会う大人たちのひとり、北久里子。時間にすると彼女の出番は決して多くはないのだが、印象に残る芝居で強い存在感を放っているから、さすがだ。
久里子はフキと同じマンションに住む女性で、超能力や催眠術の類にハマっているフキは、ある日彼女の部屋を訪ねる。フキは久里子に催眠術をかけようと試み、久里子もそれに従う。もちろん本当に催眠術にかかったわけではないのだが、フキの問いかけに答えていくうち、久里子は亡くなった夫のことを話し始める。
「何で死んじゃったんですか?」というフキの言葉をきっかけに、夫が亡くなった日のことを振り返り始める久里子。そこから河合による長尺のセリフが始まるのだが、ここが圧巻。落ち着いた表情で淡々と話す久里子だが、何かのスイッチが入ったかのように徐々に声色には熱がこもっていき、きっと話すつもりはなかったであろう夫の"秘密"についてもフキに打ち明けてしまう。冷静な表情と口調なのに、河合はその中に悲しみや後悔、怒り、失望、苦悩...と、久里子に内在している複雑すぎる感情をはっきりと滲ませている。静かなシーンであるにもかかわらず、凄味、そしてどこか色気も感じる河合の演技に釘付けになる。
思いがけず他人の心の深淵に触れる瞬間の描写が実にリアルで、なぜか心がざわつく河合の登場シーン。その他にもフキと同年代の友人との関わりや、好奇心旺盛ゆえに知らず知らずのうちに"危険"に近付いてしまうさまなど、心を揺さぶられる描写は続く。フキは子どもらしくあっけらかんとしているようでいて、時に恐れや孤独を抱えているようにも見える。そんな複雑で多角的、そして繊細な少女を演じた鈴木の演技も素晴らしい。
河合や石田、リリー・フランキーを始め、中島歩や坂東龍汰ら多彩な共演陣が顔を揃えているところも注目だ。
文=HOMINS編集部


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