薬師丸ひろ子、1984年の主演作「メイン・テーマ」の魅力――名曲とともに19歳の揺れる心を映し出す青春ロードムービー
俳優
(C)KADOKAWA 1984
同作は森田芳光監督による青春ロードムービー。薬師丸が演じているのは、幼稚園の教員をしていた19歳の小笠原しぶき。自身と同年代のヒロインを瑞々しくもドキドキさせる演技で魅せ、振り向く瞬間の表情などは、スクリーンに永遠の輝きを刻みつけた。
19歳から20歳の誕生日を迎えるまでのヒロインの揺れ動く心を、森田監督ならではの映像表現で鮮やかかつシュールに表現している。幼稚園に通う男児の父親・渡(財津和夫)に淡い恋心を抱いていたしぶきは、独り浜辺で落ち込んでいる時に4WD車に乗った見習いの若きマジシャン・健(野村宏伸)に出会う。明るくて人を驚かせることが大好きな健は、大阪に行くというしぶきを車で送って行くことになり、2人の奇想天外な旅が始まっていく。
可憐で勝気で、時折、向こう見ずな行動に出るしぶき。そんな彼女の前に立ちはだかる女性が桃井かおりが演じるジャズシンガー・雅世子だ。彼女は渡の愛人でもあり、その奔放な色気にいつしか健も心を奪われていく。強力な大人の女性のライバル出現に張り合うものの、空回りするしぶき。薬師丸はしぶきが抱く嫉妬心と悔しさ、雅世子への憧れにも似た複雑な想いを、表情やセリフのトーンで巧みに表現している。当時からカリスマ女優だった桃井と人気アイドル・薬師丸の共演、その演技の応酬も気の利いたスパイスとなっている。
■澄んだ歌声と、背伸びする健気なヒロインの心理...そのマッチングに胸キュン
同世代の健に誘われても大人ぶって「子供ね!」と返す一方で、渡にキスしてほしくて目を閉じ、緊張で全身がガチガチになるほど奥手のしぶき。彼女の心情に重なるように作中で流れるのが、"愛ってよくわからないけど 傷つく感じが素敵"と歌う「メイン・テーマ」だ。
シティ・ポップのパイオニアでもある南佳孝の作曲、松本隆の作詞によって生まれた同曲は、同時期に南が男性目線の「スタンダード・ナンバー」をリリースしたことでも話題となった。
今なお健在な薬師丸の澄んだ歌声と、1980年代の大らかな空気が詰め込まれた同作を、そのフレッシュでしなやかな演技と共に楽しんでほしい。
文=山本弘子











